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たけし vs 毒の達人 [読後の感想]

ビートたけしがサイエンスに挑戦するという設定で、様々な分野の専門家と交わす軽妙なトークをまとめた「たけしの最新科学教室」。新潮社から2008年に出版されていたものが文庫本になった。ロボット、気象、天文、遺伝子、恐竜、素数、などなど、対象とする分野の広さにもかかわらず、ビートたけしの対談の切れ味がすごい。

文庫版あとがきにも書いてあるが、たけしは対談に先がけて相手の著書や資料をみっちり読みこむだけではなく、「この人が今まで一度も聞かれていない話しを聞いてやろう」と心がけ、他の人が聞いたら怒りだすようなことなんかでもいいからとにかく聞いてみる。「たけしに聞かれたんだからしょうがねえや」って答えてくれたら大成功としている。しかし、それにしてもちょっとした一夜漬けではこの対談はできないように思う。たけしの芸人としての本気の入り方というべきか、これこそが神髄なのではないか。ひらめきや勘だけで世界のビートたけしがあるわけではないことの証明の一つかもしれない。

数ある対談の中で、おすすめは「毒にも薬にもなる話」。お相手は、日本薬科大学の船山信次教授。殺人にときどき使われるトリカブト毒の権威と言えば泣く子もだまる船山先生、らしい。毒の専門的な話しはともかく、毒物というけっこうアブナイかもしれない話題を扱いながら、軽妙な二人のやりとりが不思議に面白い。例えば、女生徒が痩せ薬を飲んで死亡したことから、それを飲むと本当に食欲がなくなるんですか?というたけしの問いに、「さて、飲んだことがないので(笑)」という先生の答え。

また、メチルアルコールで目をやられるという話しで、そういえば昔は危険を承知でメチルを飲んで目をやられ、マッサージ師になっちゃったのが多いという浅草の思い出が出てきたり、ヒロポンというのは披露がぽんと取れるからだと浅草では言われていたのに、実はギリシャ語の「仕事を好む」Philoponos のことらしいなど、蘊蓄とか専門性とかを通り越していて愉快になる。

大学進学では理系を選択したビートたけしの、科学分野へのこだわりと愛着が垣間見えることもこの対談集の特徴になっている。たけしファンにはぜひおすすめ。


タグ:毒薬 たけし
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