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チンパンジーは絶望しない [雑誌記事]

AERA 2010.12.20号 小林麻耶のワクワク対談 京都大学霊長類研究所所長 松沢哲郎氏

京大霊長類研究所所長の松沢氏は、チンパンジーを通して人間を知る研究を続けている。2005年に人間に続いてチンパンジーのゲノム解析が完了した。600万年前に共通の祖先から分かれたヒトとチンパンジーがゲノム上では1.23%しか異なっていないことがわかった。その1.23%が何を意味しているのかは今後の研究らしいが、とにかく近い仲間なのだ。人間の持っている資質の多くをチンパンジーも持っていると考えるべきなのだろう。あれは少し賢い猿で、人間ではもちろんないなどと決めつけてはいけないということだ。

京大霊長類研究所といえば、漢字や数字を理解する天才チンパンジー・アイとその息子アユムのことはTVなどでよく紹介されている。数字の一つひとつが回数(あるいは大小)を表わしていることが、学習によって身についていくことが長い研究によって少しづつ明らかになってきている。これだけでもすごいのだが、ある実験では、7個の連続しない数字をわずか0.2秒間だけ見せられたアユムが、その後で隠された数字を小さいほうから順に指で触れていくことができるのだ。しかも一つも間違えずに!もちろん、人間にはできない。0.2秒では無理だ。とにかくこの動画を見ると感動する。チンパンジーとは、ヒトとは、と悩まざるを得ない。

「この感動をもとにすると、人間は間違いなく動物の一種で、元は同じで人間は人間になったし、チンパンジーはチンパンジーになったんだと素直に理解できる」と松沢氏は述べる。松沢氏は、33年前に、まだ1歳のアイとであったときの大きな感動から、「このチンパンジーを研究していけば、やがてどこかで『人間とは何か』というような問い、自分が本当に知りたい問いの答えが見えてくる」ということを早くから意識したと語る。

チンパンジーは目の前に出たものを覚えるのは得意、でも「ないもののことを考えるのはきっと苦手、たとえば100年先のことを考えるとか地球の裏側のことに思いをはせるとか... 人間はするけれども、チンパンジーは絶対にしない。」そして、「チンパンジーは絶望しない」とも。「人間はどうしても明日を憂う... 人間が持っている想像力がそうさせる... 絶望するということの源泉が想像する力だとしたら、その想像する力で希望を持つことだってできる。」

絶望の淵から希望を見出すことができるのは、人間に与えられた最も優れた能力だが、それが一方では最大の弱点なのかもしれない。チンパンジーを見続けてはじめて見えてくるヒトの本性。これは、深いなあ。松沢氏の書かれた本、探して読んでみようと思う。
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