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太陽を撃て [新聞記事]

"From Sputnik to SunShot" NewYorkTimes 2011/2/4 by Matthew L. Wald を読んで

半世紀も前のキーワードである「スプートニク」が飛び出した一月のオバマの一般教書演説。宇宙開発のような技術競争力の強化は、国を挙げての支援と努力があって始めてなし得るという事例として使われていた。

実はこのスプートニクだが、エネルギー庁長官のスティーヴン・チュー(1997年ノーベル物理学賞受賞)が二ヶ月前に同じようなコンテクストで、公式な場で使っていたものらしい。

冷戦に入り、米ソ対立が高まる中で、優位にあると信じて疑わなかった米国の軍事力。その象徴としての宇宙開発で完全に足をすくわれたのが、人工衛星スプートニクの打ち上げ成功(1957年10月4日)であり、さらにあろうことかそのわずか3年半後の1961年4月12日には有人宇宙船(ユーリ・ガガーリン)までも先を越されてしまう。

こうした成果を共産主義の勝利とソ連が大きく宣伝したこともあって、米国は打ちのめされたという強烈な敗北感が広まった。その中で、ガガーリンの成功からわずか1ヵ月後の5月25日にケネディがぶち上げたのが、月へ人を送り無事に地上に帰還させることを国家目標とすることであった。しかも達成の期限を60年代の末までとした。

"I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, before this decade is out, of landing a man on the moon and returning him safely to the earth." 5月25日議会演説

Shoot the Moon これは文字通り「月を撃つ」で、夜空に浮かぶ月を銃で撃つようなとほうもないことを指す言葉だ。Kennedyの熱い想いは米国に大きな勇気を与え、ソ連に絶対に負けない意気込みを貫き、そして見事に約束期限内の1969年6月20日に月面に飛行士が降り立った。ケネディを深くリスペクトするオバマは、このプロセスをもう一度思いだそう、われわれ米国には限りない潜在力があることを信じようとやや古めかしい”Sputonik”をおそらくあえて引用したのではないか。

そしてチュー長官は「月を撃つ」とほうもない計画の現代版は”The SunShot Initiative”、つまり「太陽を撃つ」しかないはずだと言う。といっても、太陽に宇宙船を着陸させようというのではない。米国のグリーンニューディール政策で重要な位置を占める「太陽光発電」に挑戦的な目標を設定するということだ。太陽光発電のコストを2010年代の末までに4分の3削減し、従来の発電と互角に競えるようにするという。

太陽光発電の分野では、技術の進歩によりパネル価格低下と変換効率の向上が続いているが、現状ではまだまだ割高であり、グリッドパリティの姿がなかなか見えてこない。この新たな目標が達成されれば産業用の電力としても十分に競争力がありエネルギーの有り様を大きく変えることができる。

ケネディが示したとてつもない目標と、それをクリアした米国の潜在力が現代にそのままあてはまるわけではないかもしれないが、高い目標は示さないと決して超えられないこともまた確かである。そして米国のことはともかく、国を挙げて困難な課題に取り組まなければならないのは、むしろわれわれ日本のはずだが...



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