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ジョージ6世の開戦演説と比べては [映画を見て]

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やっと、「英国王のスピーチ」を見た。優れた監督と俳優によって創られる映画って、どうしてこんなに面白いのだろう。映画は主役であるヨーク公(後のジョージ6世)とその吃音(どもり)矯正を担うローグ、それを支えるエリザベス女王(現在のエリザベス女王の母親)のほぼ3名の会話だけで淡々と進んでいく。これがすごい。言葉のちからというか、会話の間のとりかたというか、英語が母国語の人にはとんでもなく面白いのではないだろうか。英語得意でもないのにこれだけ感動するんだから(もしかしたら勘所が違っているかもしれないが)真髄はどれだけ深いか想像もできない。

そして映画のクライマックスはナチスドイツに対する開戦を国民に告げるラジオ放送のシーン。

国王の国民に向けた開戦演説がどのような力を持つのかは、正直なところよくわからない。日本の皇室と英国の王室との違いも大きいだろうし、その存在が国民の精神性にどこまで強く影響していたかを含めて、あまりに不勉強。少なくとも、この映画を観たくらいではわからない。しかし、ナチスとの大きな戦いが不可避になりつつある状況下で、英国と英連邦のすべての国民に対し国王として発する開戦演説が国民の士気と団結にとってきわめて大きな鍵を握ることは明らかであろう。だからこそ国民の士気を奪うような、情けない演説は決して許されない。そんな強大なプレッシャーを一人で背負い(死去した父の王位は兄が継承したはずなのに)、ラジオの生放送に臨んだ。映画では、この場面の緊張を際立たせるため、ベートーベン交響曲7番の第2楽章が重く厚く流される中をジョージ6世とローグの二人だけが録音室に入る。そしてマイクの前で、あの演説が始められる。

以下は演説の一部

It is to this high purpose that I now call my people at home and my peoples across the seas, who will make our cause their own. I ask them to stand calm, and firm and united in this time of trial. The task will be hard. There may be dark days ahead, and war can no longer be confined to the battlefield. But we can only do the right as we see the right, and reverently commit our cause to God. If one and all we keep resolutely faithful to it, ready for whatever service or sacrifice it may demand, then, with God's help, we shall prevail. May He bless and keep us all.

この崇高な目的のために、今、私は国内外のすべての国民を召集します。我が国民は、我々が開戦に至った理由を、自分たち自身のものとして理解してくれるでしょう。この試練の時に、冷静に、堅固に、結束して構えて欲しいのです。任務は厳しいでしょう。暗い日々が待ち受け、戦争はもはや戦場だけで行われるものではなくなるでしょう。しかし我々は、我々が正しいと信じることだけを行い、厳粛に神に仕えましょう。我々が固い意志を持ち、神に忠実であるならば、神がどのような犠牲を望んでも覚悟して臨むならば、神のご意志のもと、我々は勝利するでしょう。 神の加護が我々とともにあらんことを。

この演説は、ナチスドイツとの全面戦争への英国民の士気を奮い立たせるのに大きな役割を果たしたとされている。その翌年、ドイツが英国本土に空爆を開始し英国は劣勢に陥ったが、ジョージ6世は妻のエリザベスとともにロンドンに止まり、しかも「最後まで戦う」と宣言したことから、国王への支持は高まりその士気は保たれた。

1939年のこの演説の録音はここで聞くことができるが、映画はその演説のスピードや話しのテンポなどをかなり忠実に再現していたように思う。内容は複雑なものではなく、論点を整理してありとてもわかりやすい。そしてゆっくりと、国民の一人ひとりに語りかけるような演説であった。

ぐっときたのは、“この試練の時に、冷静に、堅固に、結束して構えて欲しいのです。”というところ。国家の危機に際し、精神論一辺倒で、とにかくがんばりましょうと声を張り上げ繰り返すだけのリーダーに比べて、この穏やかだが格調の高い、そして真に心から国民に語りかけようとしている演説のほうが、はるかに腑に落ちると感じるのは私だけだろうか。

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