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再生可能エネルギー法の修正点 [エネルギー]

8月26日参議院本会議において「再生可能エネルギー特別措置法」が成立した。法の成立に菅さんがその進退をかけたという話は、いずれ何年か後に菅という政治家が歴史の評価を受けるときに採り上げればよい諸々のエピソードの一つにすぎない。いま考えるべきことは、どんな法律ができあがり、それがこれから日本の社会にどのような影響を与えていくか、だからどんな行動をとるべきかということであろう。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)については、自民党政権下で検討が始められていたものが、2年前の政権交代で現政権に引き継がれたという経緯がある。経済産業省の審議会で政権交代時の中断後、ほぼ1年間をかけて検討が進められ、この結果を踏まえて法案としてまとめられたものが、あの3月11日の午前中に閣議決定された法案である。その日の午後に震災に襲われたこともあって、この法案は実質的にたなざらし状態となり、菅内閣の命運とともに日の目を見ず葬り去られるかと思われていたが、7月になって一転して表舞台に登場し、会期末ぎりぎりで成立にいたった。

法案については、産業界特に経団連は強く懸念を表明しており、例えば米倉会長は7月19日の毎日新聞の取材に対して「法案が成立すれば、電気料金が上がり、安定した電力が供給されなくなる恐れがあり企業は海外に出ざるをえなくなる。」と述べ、さらに「このままでは国破れてソーラーありという世の中になる。」とまで、恫喝とまではいかずとも、まあ言いたい放題である。

確かに、法案では買取価格の詳細やその判断方法、見直しの手続きなどには踏み込んでいないなど、これは考えかたを示した理念法あるいは単なる枠組み法なのかと思わざるをえないようなところがあり、詳細は霞ヶ関で決めますからと言われているようで、このままでは、仮にすうっと成立しても、将来に禍根を残しかねないなとは感じていた。

国会審議、とくに法案可決の成否は野党が握っていたが、その鍵を握る自民党は、産業界の反対意見に配慮するかのように、初めにエネルギー基本計画の見直しありきであり、基本が曖昧な状態で買取という個別の施策を先行させるべきでないと述べるなど、法案の成立には否定的な雰囲気が強かった。それが、党内のエネルギー特命委員会において「今このタイミングで、一歩踏み出すことは、この分野における日本の産業競争力確保の面からしても、意義がある」との意見が集約され、法案に必要な修正を加えることで成立をはかることとなり、その結果、民主・自民・公明の各党による法案修正が合意された。

法案の修正の中で特に目立つものをあげると、

1.買取の価格と期間
 ・発電設備の区分のほか、設置の形態及び規模ごとに定める
 (太陽光は40円20年、その他は一律20円15年といった荒い決め方はしない)
 ・半期ごとに価格等を定めることができる
 (状況に応じて柔軟に見直す)
 ・適正な利潤を勘案する
 (公益事業としてわきまえるべき水準)
 ・発電設備の所管に応じて農林水産、国交、環境の各大臣に協議
 ・第三者によって構成される調達価格等算定委員会の意見を尊重
2.発電の認定
 ・調達期間にわたり安定的かつ効率的に発電することが可能であること
 (安かろう悪かろうの排除)
3.サーチャージの特例
 ・製造業の場合には、製造業平均原単位の8倍を越えると最大8割減免される
 ・東日本大震災の被災者はゼロ
4.調達価格等算定委員会
 ・5人の委員によって組織され、この人事は国会の同意事項。
 ・委員会は公開
5.施行
 ・平成24年7月1日から
6.利潤に関する配慮
 ・施行から3年間を普及加速期間とし、買取価格など特別に配慮
7.見直し
 ・エネルギー基本計画の変更されるごと、または少なくとも3年ごとに見直し
 ・2020年度末までに抜本的見直し

あいまいであったところのいくつかが修正され、現時点でのベストではなくともベターな解には近づいたように見える。政治的に多くの妥協の産物だとしても、この混乱期にとりあえずここまでたどり着いたことには敬意を表したい。おそらく、3.11とフクシマがなければこうはならなかったのではないか。官からも民からも広く知恵を集め議論を重ねる、こういうプロセスこそが、いわゆる「政治主導」なるものと思いたい。

しかし、すべてはこれからだ。第三者委員会の構成はどうなるのか。エネルギーに対する国としての方針が不明瞭なままで、突っ込んだ議論が本当にできるのか。そもそも新しい内閣(あるいは首相)は、この課題をどう位置づけるのか。等々、考え出すときりがないが、この法律の成立が日本の再生へのきっかけの一つとなり、東日本の被災地の復興にも大きく貢献できることを信じたい。

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