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明日にも地震が来るのか [新聞記事]

風知草:首都地震、不安と油断=山田孝男 毎日新聞 2012.1.30掲載より

急に騒ぎとなっている「首都地震M7級、4年以内に70%の確率で発生」だが、よく考えるとこれは科学の話しのようで、必ずしもそうではないことに気づく。

東京大学の平田直教授(地震予知研究センター長)によれば、「4年で70%も30年で98%も同じことを言っている」ことになる。つまり、地震の規模と出現確率が対数則に乗るという経験則に基づき、3.11後の新たなデータで見直すと出現確率が従来の評価より上昇したということなので、ひとつの事実として地震への備えを一層高めるべきと受けとめればよい。

地球物理的に言えばその通りのはずなのだが、まさに平田教授の指摘するように、98%の確率といわれても一方で30年と言われたとたんに、明日のことではないと勝手に決めつけ、緊迫感が薄れてしまうということなのだろう。そこに「4年」という30年後に比べれば具体的(なような気がする)で目の前の時間軸を示されたとたんに「話しが違う」と爆発的反応が生じたということのようだ。

地震の観測結果から、規模と発生確率の関係を導くことは科学そのものだが、その関係式をどう読み解き、どう公表するかはかなり社会的な色合いが濃いはずである。地震のように人々の不安や恐れを連鎖的に呼び起こす可能性のある事象を発表する場合には、誰に話させるかをよく考えた方がよい。社会という枠組みに興味のない、あるいはできれば関与したくないと考えている学者に、真実は一つしかないという類の主張をさせることは、あまりに無用心だと言わざるを得ない(もちろん地震研の誰かがそうだと言っているわけではない)。

もっと注意すべきことは、こうした科学的見解の表明が「地震を予知」できる予言者の言として受けとめられていることであろう。誰も東大の先生が予言者だと思っているわけではないのだが、大新聞やTV等のメディアがいっせいに「4年以内に首都地震」と騒ぎ立て始めると、いつしか尾ひれがたくさんついて「間違いのない予知」と解釈され広まってしまう。

以下に、毎日の山田孝男氏のコラムの一部を紹介する。

(略) 初報は読売新聞23日朝刊だった。1面で「首都直下型/4年内70%/M7級/東大地震研試算」と特報した(東京本社最終版)。日経、東京、毎日が夕刊で追い、朝日と産経は24日朝刊で伝えた。各紙とも見出しは読売と同じである。テレビは報道部門だけでなく、各局ごとにいくつもある情報番組が一斉に反応した。オールマスコミの怒とうの攻勢に音を上げた地震研が、ホームページ上に読売報道の背景解説のための特設サイトを立ち上げたというのが実情だった。しかも、地震研の研究チームのこの見解は昨秋、公開の研究発表会で報告され、報道もされている。

しかし、地震研のサイトを見る限りでは、これで混乱が収まるとはとても思えない。このサイトで言いたい(らしい)ことは、「首都地震の発生が4年で70%」とは(東大では)言っていないことと、東北地方太平洋沖地震の誘発地震活動の挙動と首都地震の関連はよくわからないということの二点なのだが、このところのTVのニュースショーでの解説をみると、こんな寝ぼけたことを言っている人は誰もいない状況になっている。

(略) 平田によれば、「30年以内に98%」と「4年以内に70%」は同じである。だが、人間、30年ならまだ先と侮り、4年と聞けば驚く。読売は公表ずみのデータを鋭角的に再構成し、「4年以内」を強調したことで反響を呼び、他のマスコミも追随せざるを得なかった。

どちらの方がインパクトがあるかを考えるのはメディアの仕事。地震研では、活発化した地震活動と首都地震の発生との関連性はわからないと言っているにもかかわらず、これらを一体のものとして論じてしまうところがいかにもと言えばいかにも。

(略) 「マグニチュード7のエネルギーは東日本大震災(M9)の1000分の1ですよ。首都直下と予測したわけでもない。誤解を招きやすい報道でしたけれども、関東地方の油断に警鐘を鳴らす意義はあった。大地震の発生確率は前より高まっており、備えは大事です」 (略)

“千分の一”とそう簡単に言い捨てることはないのにと思うが、平田教授にこう決めつけられてしまえば、もう身も蓋もない。それにしても、警鐘を鳴らせたからよしとするというのはいかがなものかと...。

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