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再生可能エネルギーはエコではない? [新聞記事]

「再生可能」の限界 認識を;石井彰氏(エネルギー・環境問題研究所代表)
日本経済新聞、2012.2.8 経済教室、新エネルギー戦略(中)を読んで

“「3.11」が文明史的転回点といいながら、現代文明のエネルギー面の基盤を理解していない議論があふれている” とのっけから叱られて始まってしまうのは、おそらく石井氏の流儀なのでこれはこれでしっかり受け止めたほうがよさそうだ。しかし、その少し前でエイモリー・ロビンス氏の「ソフト・エネルギー・パス」1976年の内容を “歴史と原理を軽んじ、深い洞察力を欠いていたからだろう” とまでコキ下ろすくだりは、さすがに言い過ぎではと首をかしげざるをえない... まあ、そのあたりはあくまで前振りなので、つかみとしては効果的だともいえるのだが。

この論考の中心は、さまざまなエネルギー源について「エネルギー産出/投入比率」と「出力密度」を基本して検討すべきというところにある。最初の産出/投入比率は、エネルギーを獲得するために要した労力とそれから得られるパワーの比のことで、薪炭(まき、すみ)ではわずか数倍だが石炭では数十倍、石油や天然ガスになると数百倍。これに対して太陽光発電は5~7倍、風力発電では10倍前後で化石燃料の平均である40~50倍と比べて見劣りする。

もうひとつの出力密度は地表面積あたりの出力を示し、土地利用への負担、生態系への直接負荷表す指標となる。 “再生可能エネルギーはエネルギー密度の低いフローの太陽光を直接・間接に利用するので、火力発電所や原発並みの大出力を得ようとすると、膨大な地表面積を占有せざるを得ず、温暖化ガスはほとんど出ないが、生態系に大きな直接的負担をかける。例えばメガソーラー発電所は、出力密度が最も高い天然ガスのコンバインドサイクル発電所の2千分の1程度しかなく、生態系への直接負荷もその分圧倒的に高くなる。すなわち大規模利用すれば決してエコではない。”

この部分の石井氏の主張は強烈で、石油や天然ガスの価値はその高密度さと高効率にあり、太陽光や風力では及びもつかないことを最初に知るべきであり、 “再生可能エネルギーの比率を一定以上に高くできる社会は、人口密度が低く土地が相対的に余っているところしかない。” と断定する。

温暖化を加速させる主犯として化石燃料を取り上げるのではなく、その有効な活用を徹底追及すべきだという意見には賛成だが、一方で再生可能エネルギーを化石燃料と比較して桁違いに効率の悪いことから「エコではない」というのは同意できない。これでは、山手線の内側にソーラーパネルを敷き詰めても原発一基分にしかならず、日本では基幹エネルギーの代替にはなりえないという議論と変わりない。

薄くありふれているものを利用できるというのは、濃密だが希少なものを扱うのとは当然にパラダイムが異なる。両極の端からもう一方の端を罵っているようなもので、不毛だとまでは言わないが、あまり生産的ではない。どんなに薄くとも、自然が届けてくれるエネルギーをこつこつと蓄え利用することが仕組みとして保証できるのであれば、チャレンジの価値は大きい。

なにより、持続可能な世界のありようを考えれば、化石燃料といった限りある資源に依存し続けるリスクと、それらの利用によって生じる廃棄物や廃熱の処理リスクは決して小さくはない。これらは、文明が人の何百倍もの大きな力を獲得し発展するための代償であり、社会と産業の発展はこの代償の克服の歴史だったともいえる。

太陽光や風力といった再生可能エネルギーでは、新しく社会に受け入れられるための努力や仕組み・制度が欠かせないといったことはあるにしても、化石燃料に比べれば「償う」べきものは十分に低いと見込んでよいだろう。資源枯渇も廃棄処理も、エネルギーの密度が低いことがプラス側に効き、エネルギーにおける持続可能性を担保することにつながるはずである。

もちろん高密度で高効率の化石燃料を持続可能性の面から上手に扱うことができれば、これを二項対立的に否定する必要などないので、異なるタイプのエネルギーの並存を当面は目指すべきであろう。そうした意味で、石井氏の “再生可能エネルギー中心の電源の中だけの「部分最適化」だけではなく、エネルギー利用の「全体最適化」の議論が重要だ” という意見と重なるのだが、再生可能エネルギーが部分に捉われて全体を見ていないというところは納得ができない。

再生可能エネルギーでは、薄いが有り余るエネルギーを対象とするからこそ、エネルギーに関わる全体像を把握することが欠かせないのだが、 “自給自足や地産地消だけでは答えにならない” とされ、 “他の分野に比べてエネルギー問題は巨大、長期、複雑であり、単純で拙速な方法は通用しない” と決めつけられては、とりつく島もないというか...

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