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3.11には予兆があったのか [雑誌記事]

「震災を踏まえた技術者への提言:地殻変動にみる3.11巨大地震の予兆 -地震予知を放棄すべきか?-」神山眞、杉戸真太、久世益充 ;土木学会誌 vol.97 no.3 March 2012 を読んで

3.11の巨大地震には、その予兆とも言うべき現象があった。
思わず読んでいた学会誌を手から滑り落としてしまった。こんな大事なことが、なぜ今になって...

実は、震災後1ヶ月の時点で地震発生の兆候と思われる地殻変動を把握していたという。
具体的には、国土地理院が日本全国の1240地点に整備したGPS位置観測点(電子基準点)GEONET(GPS Earth Observation Network)の位置情報を解析したところ、地震の発生直前に予兆を思わせる「変化」を把握し、部分的に公表してきたが、地震予知専門機関からこの点に関して何らかの変化があったことの言及は公式にはなかった(黙殺されたということ?)という。このあたりの専門領域の棲み分けみたいな話しは、正直よくわからないというか、どうでもよいので、その発見された「予兆」についてここでは紹介したい。

位置情報の解析の詳細は省略するが、今回の巨大地震の震源に近い北東北から関東に至る広い範囲にある観測点で、同一傾向として従前状態と異なる変位が“3日前“頃から現れ、その異常が発展しながら本震に至った経過が明瞭に示されているという。これらの結果から、筆者らは、3.11巨大地震発生前の地殻変動にいわゆるプレスリップ(事前滑り)を暗示する予兆が明確にあったとの結論に達したと述べている。

示されている変位量の時間変動グラフを見ると、はっきりと異常な変化が数日前から始まっていたことが読み取れ、彼らの結論には頷かざるをえない。この結果について言えば、この変化を有意だと言わないとすれば、もう地震予知研究は止めた方がよい。なぜかコメントをしない研究機関の予算をどこかに回した方がよいのでは。

そもそもこの問題提起は、地震の直後から「想定外」という言葉が独り歩きし、発生を予見しえなかった地震学そのものが激しい攻撃を受け、研究者の中からも自己批判あるいは予知に対する罪悪感が生じたことをきっかけとしている。筆者らは、観測事実から予兆を見出す努力さえも完全否定する「予知罪悪論」に対して、事実をもって反論すべきとしており、それがこの提言となっている。

筆者らは最後に次の言葉で提言を締めくくっている。
「性急な地震予知放棄論に与することなく、地震工学の分野でも多くの目で予兆を見逃さない監視を継続する地道な努力がむしろ求められていると言えないだろうか」

それにしても、3日も前から観測網に引っかかるのであれば、仮に分析に時間を要して地震襲来の警告が1日前になったとしても、あの甚大な被害を少しでも軽減することもできたのではないだろうか。



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