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ミュージシャンの反対運動 [新聞記事]

シェールガス革命によって米国はエネルギー問題から解放された。こうした見方が主流になってきたのは、ほんのこの何年かのこと。天然ガスの埋蔵量の大半はロシアや中東の一部に限られており、石油と同じような地勢リスクを米国は抱え続けていたのだが、大深度ボーリング技術の開発と頁岩層に化学薬物を含む大量の水を注入することで新しいエネルギー源を手に入れる目処が立ったのだ。

“ニューヨーク州デラウェア郡の北部、キャッツキル山地の麓の小さな丘の間をオーレアウト川が緩やかに流れサスケハナ川に注いでいるところ、私が生まれる前に両親が購入した農場がそこにある。”
という書き出しで始まるこのニューヨークタイムズ紙の論説に投稿したのは音楽家のショーン・レノン。すなわち両親というのは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコのことである。


「天然ガスによる貴重な土地の破壊」という題が示すとおり、環境破壊に対する警告が主たる内容だが、ショーンはこの論説の発表と期を合わせて、Artists Against Frackingというシェールガス採掘反対運動を母親のオノ・ヨーコと共に主催し、今後活動を拡大することを発表している。

ショーンにとって、少年時代に最も大きな影響を受けた(ジョン・レノンは彼が5歳の時に亡くなっている)場所であるその農場を含む地域で、数ヶ月前唐突にガス会社による開発計画の説明会が開かれた。それは、シェールガス採掘のため、手つかずの自然を切り裂いてパイプラインを張り巡らせるという計画である。説明会に参加した住民(多くが有機農業に従事)は、強烈に反発姿勢を見せたが、ガス会社はそうした反応には気にもかけぬふりで、(反応がどうであれ)この小さな町で掘削開発を推進するという意図を見せつけた。

この説明会の後、ショーンはシェールガス採掘で深刻な汚染が生じたペンシルバニアの現状を自ら調べて、開発計画の中止を訴えるべきと考えるに至ったという。ショーンによれば、”天然ガスはクリーンなエネルギーとして売られているが、地中の頁岩層を大量の汚染水で破砕する手法を採っており、むしろダーティなエネルギーと呼ぶべきである。有毒な化学物質を大気と地下水にばらまくことになる”、という。さらにショーンは、ニューヨークの近辺は、きわめて清浄な地下水に恵まれており、ニューヨーク市民は世界一うまい水を享受できるのだが、これも地下水の汚染によって喪われると指摘している。

ショーンはさらに、ニューヨークのブルームバーグ市長の、“ガスの開発計画は、ガスの汲み上げは適切な場所を選定し、その作業は慎重に行われることを確認している”、という型どおりの発言にも、“ニコチンの少ないタバコを、適切な場所で適切な時間に吸えば、喫煙も安全だ“と言うのと変わらないと噛みついており、行政や政治にはまかせておけないという思いが運動をスタートさせたと述べている。

ショーンの批判のすべてが正しいかどうかは判断の難しいところだが、影響力のあるアーティストが何かに感ずるところがあれば忽ちに活動を立ち上げ、共鳴する仲間を募って世に問うていくという行動力は、高く評価すべきだと思う。このニュースが日本ではあまり積極的には取り上げられていない(朝日新聞のみ?)のは、芸術家の活動に対する社会の受け取り方の違いからくるのだろうか。あるいは、動機があまりに情緒的だと決めつけられているのだろうか。


それにしても、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの話を持ち出されると思わず身を乗り出してしまうのは、これも小生の年齢のなせるわざか。ちなみに、オノ・ヨーコは79歳だそうだ。

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