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マンドラゴラの叫び [読後の感想]



畏友、船山信次氏:日本薬科大学教授より、新著「毒の科学」献本いただいた。
こんどの本は、新書版ではなく、かなり重量級。しかも、カラー図版が多く内容も稠密。これまで、船山氏が著してきた一般向けの「毒」の本の中でも際立っている。ここまでくると、毒に関する科学啓蒙書としては、百科的な役割さえ担って、この領域の頂点に立つと言ってもよいのではないかと思う。とにかく、これが手許にあれば、毒について何か知りたいことがあれば、必ず一定の回答がここにはある。そういったタイプの本である。

もうひとつ、この本の特徴は、新書版と異なり大型(A5版)であること、しかも使われている図はすべてカラー刷りである。このため、古代から中世にかけて、暗殺の横行による毒の恐怖と宗教(あるいは魔術)が重なり合っていた時代の、おどろおどろしい雰囲気が挿絵(多くは中世の宗教画)からにじみ出ている。正直、かなり気味悪いのもある(例えばこの本の最初に掲げてあるマンドラゴラなど)。年少の子供に不用意に見せると、怖い夢にうなされるかもしれない。死の恐怖、毒が持つ悪魔的な力、このイメージは強烈だ。しかし、この本の最大の価値はここにあるともいえる。すなわち、毒を単に科学の視点からだけでなく、人類の歴史文化の中で果たしてきた役割についても力点を置いていることである。船山氏は、毒は死に関わる危険なものとして知られていたと同時に、その存在がむしろ文明の発達を促してきたとも考えられるとして、次のように記している。

人々は毒でしとめた獲物を食べても大丈夫なことを知っていた。これらのことがらは、やがて記録として残されるようになる。古い記録には毒や薬の記載が必ずといっていいほど見られる。まるで人類はこれらのことがらを記録したいがために文字や粘土板、パピルス、紙、筆、墨、インクなどの記録手段を発明してきたかのようですらある。

手に取ると大変に美麗であり、知識の宝庫と呼べるような本なのだが、船山氏は読者に対して次のように注意を発している。

“記述を鵜呑みにして自己または他人に応用されないように”

<マンドラゴラ>
人のように動き引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという伝説がある。ハリーポッターに出てきたことで知られているように、ヨーロッパの伝承には頻出する。

250px-Mandragora_Tacuinum_Sanitatis.jpg

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