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はだかの王様 [新聞記事]

history_img_06.jpg「コミッショナーの選び方」、“選球眼”、島田健(編集委員)、2013年6月17日、日本経済新聞朝刊を読んで

いったい何を隠しているのか。真実を話せない理由はなんなのか。

突如として大きな話題となっている統一球問題だが、新聞、TVなど、どのメディアを見ても裏に隠されている「事情」がまったくわからず、首をかしげていた。それが、このコラムを読んで氷解した。

WBCなどを強く意識して採用した統一球があまりに飛ばないため、プロ野球の魅力を大きく損なってしまったという認識が最初にあった。野球の醍醐味はホームランにつきる。これを取り戻すために、球に少し手を加えて元のように飛ぶボールにしよう。ここまでは、そんなにおかしな動機ではないのだが、これを極秘に行うことにしたところですべてが歪んでしまった。

オーナー会議という日本野球機構の意思決定機関に諮ることなく進めたというのは、球の変更に同意が得られないと見込んだのか、あるいはガバナンス無視かよくわからないが、ボールの中身をちょっといじっても誰にもわかりはしないし、ホームランが量産されて文句を言うやつはいないはずだという勝手な決めつけがあったのだろう。この判断をコミッショナーがしたとすると、それはそれですごい(まったく同意できないが)決断だと思っていたのだが、島田氏の指摘するように球界の影の実力者がすべてを仕切っていたのだとすれば、なあんだそういうことかとストンと腹に落ちた。

加藤氏の指示でないのが事実なら、球界で同氏を上回る力を持つ、誰か(またはグループ)が、変更に消極的だったとされる加藤氏に代わって指示したとしか思えない。

つまり現在のコミッショナーはお飾りにすぎないということなのだ。島田氏は次のように書いている。

まず、コミッショナーの選び方を公明正大にすべきだろう。加藤氏がどうして選ばれたか、実はよくわからなかった。野球好きの元駐米大使というのは有名だが、誰が推薦したのかわからないうちに決まっていた。球界の影の実力者が決めたというのが大方の見方で、それなら今回、統一球を「調整」しようとする動きがあったことを加藤氏が知っていたとしても、とやかく言えないのも納得できる。

この辺りのことは噂だとしながらも、すべてが闇の中で決められている機構の怪しさと危うさを的確に突いている。こんなコラムは日経でないと載せられないし、もちろんTVでは絶対に取り上げられないのだろう。影の実力者というのは、十人が十人すぐにあの人とわかってしまうのだが、今回の件に限ってみれば、その「誰か」がすべての根源だとは思えないところもある。陰謀の「源」といった論説は分かり易いが、こうした決め付けはしばしば本質を見失う。むしろ、プロ野球という歴史の長い巨大業界に居座る「既得権益集団」が、絵を描き密かに実行に移したのだと考えるほうが自然であろう。

コミッショナー側にはなんの権限もない、さらに踏み込めば「はだかの王様」でしかなかったと素直に認めれば話は簡単なはずなのだ。もっとも、そんな芸当ができていれば今の混乱はないのだろうが。

島田氏は江川事件後のプロ野球界の混乱を裁いた下田武三コミッショナー(1979-1985年)を高く評価しており、こうした硬骨な人でなければ今後の改革は難しいと述べている。

巨人の不祥事である「江川事件」の後、1979年から85年まで務めた下田武三氏は元最高判事。「正しいものは正しい、悪いものは悪い」と飛ぶボール、飛ぶバットなどの禁止や球場規模の適正化を進めた名コミッショナーだ。下田さんは厳正過ぎるほどのやり方でセ・リーグ側と相いれず、2期で辞任し、球界近代化の功績がありながら、殿堂入りも果たしていない。今、改革を期待するならひも付きでない、同氏のような硬骨の人こそ必要である。

会津武士のように「ならぬものは、ならぬ」と、影の実力者の首に鈴を着けに行くのは、いったい誰になるのだろう。

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