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コンサルタントの悪い癖 [読後の感想]

「不格好経営」南場智子、日本経済新聞出版社を読んで

読後感の悪い本に出会うことがときどきあるが、この本はかなり爽快だった。これからの南場さんの目指している世界のことも含めて、できれば続編を読みたいと感じた。ここでは、本筋であるDeNA成長のエピソードではなく、おそらく筆者は余談で書いたのだろうが、個人的にはいちばん受けてしまったところについて紹介したい。

それは、10年以上も世界有数のコンサルタント会社であるマッキンゼーに在籍していた南場氏ならではのコンサルタント批判である。批判と言っても、コンサルが不要だと言うのではなく、コンサルの陥りがちなケースを知っておくかどうかで、コンサルを使う側では大きな違いが生じうるということでもあろう。

事業を外から眺めて分析し提案するというコンサルの技法を身に着けてしまうと、いざ自分が事業を先頭に立って引っ張るときには、必ずしもそれがプラスには働かない、もっと言えば足を引っ張ることさえあるという。

「するべきです」と「します」がこんなに違うとは”、と述べているが、これこそ実感だろう。

また、事業トップだけでなく、事業チームでも同じことが言えるという。
迷いのないチームは迷いのあるチームよりも突破力がはるかに強いという常識的なことなのだが、これを腹に落として実際に身につけるまでには時間がかかった。

チームを率いるリーダーに求められることについて次のようにも述べている。
リーダーの胆力はチームの強さにそのまま反映される。それが、クライアントに「役立ったか」、クライアントを 「impress したか」を四六時中気にしていたコンサルタント出身者にとってはとても大きなジャンプなのだ。

このコンサルティングの目的と顧客への配慮が必ずしも同じにはならないという点は少しわかりにくいが、これについては、さらに突っ込んで、南場氏はこれらを「事業にマイナスな姿勢」と呼んで以下のように厳しい指摘をしている。

第一は、できる限り「賢く見せよう」とする姿勢。確かにコンサルは切れ者でかつ賢いなあとクライアントに思わせないと、まず仕事はとれない。高額のフィーを払って、事業の抱える問題を洗い出してもらおうと考えるトップにしてみれば、自分よりも賢くは見えない相手をコンサルに使おうとは、普通は考えない。その結果として、コンサルは賢く見せてあたりまえということになる。しかし、この「賢い」態度が事業の現場ではなんの薬にもならない、アホをさらけだしても切り抜けなければならないことのほうがよっぽど多いのだと指摘する。しかし、これを逆にとれば、賢く見せようとしている事業トップがいたら(というかよく見かけるが)、その会社は危ないという黄信号を出しているともいえるかもしれない。

第二は、「上から目線」。コンサルティング会社ではよく、「あの事業部長はわかっていない」などという類の会話がストレス解消のつもりで口にされることがあるが、これを若手のコンサルタントが耳にしているうちに、たいがいのクライアントはアホと錯覚し、いつしか残念なことに目線が高くなってしまうという。先の「賢い」といい、「上から目線」といい、コンサルというのはいやな人種だと思われてなんぼということなのだろうが、外から見れば痛い話ではある。

第三は、クライアントの中で誰がキーパーソンかを素早く見極め、その人に「おもねる」発言をすることが多いという点。こういう提案はキーパーソンのA氏には必ず受けるという計算が自動的に働いてしまうということだろうか。おもねるというアクション、実はこの時点で第三者であるべきコンサルではなくなっているのだが、おそらく多くのコンサルタントはこれを認めないだろうとも南場氏は述べている。しかし、ここはかなり微妙かもしれない。キーパーソンが納得しないアイデアでは実行に移しがたいので、同化することを全否定するべきではないという意見もあるだろう。しかし、南場氏の言っているのは、そうした性癖が事業リーダーであるときに顔を出したらもうおしまいだという警告である。リーダーが自らの信念にこだわらずに、誰かに「おもねる」態度を見せた瞬間に組織は持たないということを経験として強調しているのだろう。

そんな癖を持っているであろうコンサル会社からも、その才能を信じてDeNAでは採用を続けているという。面白いのは、そうしたコンサル出身者への南場氏の具体的な次のアドバイスである。

・何でも3点にまとめようと頑張らない。物事が3つにまとまる必然性はない。 ・重要情報はアタッシュケースではなくアタマに突っ込む ・自明なことを図にしない ・人の評価を語りながら酒を飲まない ・ミーティングに遅刻しない





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