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未来情報がもたらすものは [講演を聞いて]

「日本のIT戦略とスマートグリッドが与える経済効果」慶應義塾大学国領二郎教授、スマートグリッドジャパン10月28日講演を聞いて

コンピュータネットワークが情報を産み出し蓄積し続けることで大きなインパクトを社会に与えてきたが、家庭やオフィスにあるあらゆる機械や電気器具がネットワーク化されることによって、そうした機器の動作モニターとコントロールを可能とする、いわゆるスマートグリッド(言葉の定義は未だ混沌としている)の時代が訪れつつある。こうした流れは、IT第三期と呼ぶべき大きなステップであり、「情報資産の時代」の到来と位置づけることができるというのが国領氏の主張。これからは、どれだけ情報を持っているかではなく、情報資産の「活用力」が問われる時代になり、情報とエネルギーが結びつくところにこそ大きなチャンスがあると認識すべきと説く。

今まではそこに情報がなかったために、「地球にやさしい」といった情緒的なアプローチでしか環境問題に対峙することができなかったのだが、ITとエネルギーが結びつくことで、これまでは手からこぼれ落ちていた資源を有効に活用できることになる。家族の暮らし方、地域社会のあり方が、よりスマートになるはずだ。

しかし、ネットワークとエネルギーが結びついている世界を想像するのは、正直に言えばまだまだあまり簡単ではないし、どうしてもネガティブに考えがち。例えば、我が家族は暑がりなので夏にはエアコンはやや低めの設定にしていることが多いのだが、地域のエネルギー監視網にひっかかって強制的に(しかも気づかないうちに)設定温度を変えられたり、あまりに度が過ぎると電源を強制遮断されるとか、効率を優先するガチガチの管理型社会を思い浮かべてしまう。

そんな不安を払う新しいキーワードを国領氏が示してくれた。それは、「未来処理」。これまで、コンピュータの出現から活躍の歴史の中で目指してきた一つのターゲットは「リアルタイム処理」だった。既に起きてしまったことを事後的に解析するのではなく、事象とほぼ同時に判断し処理を行うこと。自動認識や人工知能といった人間のある部分の代替機能をコンピュータに求めることもこれに加わった。これに対して未来をつかまえるというのは、タイムマシンになれということ(それができたらすばらしいが)、ではない。

TVの録画予約は、もしネット上で集約されれば、明日の視聴率になる。ネットにつながる一人ひとりが、将来の自分の行動を予め確定することで未来の活動データベースが構築され、これが新しい価値を生み出す。自分の予定表を公開する?そんなお人よしがいるはずがない、と考えるとなにも前へ進まない。

出前のピザ屋が、電話があれば即配達という形態の他に、明日以降の注文をしてくれれば300円引きますという提案をすること。これは仕込みでの無駄の排除や、配達などの効率の改善が生み出すメリットを顧客とシェアしようというモデルなのだが、これこそ未来を対象とした商売であることがわかる。同じような類推が明日のエアコンの使用時間を予約することでも使える。料金割引などの適切なインセンティブを設定すればうまく回るかも。

未来の状況を予約し確定することで、生じるメリットを供給者と需要家が共有するというモデルがITとエネルギーが結びあう時代には必要になってくるという考え方。未来の状況を予測するとも言えるし、そうなるように誘導するとも言える。

なるほど未来処理が示す姿はすごい。けれども、過去、現在だけでなく、未来まで押さえられているのかという、べったりとした違和感は拭いきれない。導かれるのはいいが、拒否もできるようにしてほしいな。ついてこれないヒトはいいですよ、と言われてしまいそうだが。

 
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