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東大を跳躍台に、世界に通用する人材育成のために [新聞記事]

10月4日付けの日経朝刊に掲載された益田隆司氏:船井情報科学振興財団常任理事の「海外に出ない大学院生」の中で引用されている、小林久志元プリンストン大学学部長の東京大学大学院入学式挨拶:2010年4月12日は刺激的でかつ示唆に富んでいる。その内容を引用しつつ感想を述べてみたい。

小林氏の祝辞は、まず日本の20年間におよぶ停滞の理由について言及し、その大きな要因が「我が国のリーダー達の多くが、残念ながら力量不足で、今日のグローバルな世界で競争する為に必要な知識、洞察力、英語能力に欠けていること」にあり、「パラダイム・シフトに対応し、有効な戦略を立てるべき日本の経営陣と彼らのスタッフの中に、国際的に活躍した経験や、諸外国のリーダー達との人的繋がりを持ち、直接コミュニケーション出来る人材の少ないことが、我が国が苦境に立たされている、大きな要因である」としている。

祝辞では言及していないが、参考資料ではさらに、リーダーが育たない原因として、1.社会・文化的要因:戦後の極端な平等主義がリーダーを求める気風を欠如させた等、2.教育・トレーニングの問題:勉強しない大学生、それを許容する大学及び社会、惨憺たる英語教育等をあげている。特に、米国の一流大学が世界の駿才を根こそぎ集める中で、アジアの新興国であるインド・中国・韓国からの留学がこの10年間で着実に拡大する一方で、日本からの留学はじりじりと縮小を続けている。

小林氏はこうした日本の状況を打破するためにも、東大の大学院に進む若い学徒に米国の一流大学での博士課程を目指すべきと強く薦めている。「世界の中で最も優れた大学が圧倒的に米国に集中していることは疑いの余地がない。これは米国の大学と社会が優秀な人間を分け隔てなく迎え入れ、活躍の機会を与えるので、優秀な研究者が世界中から集まってくるからだ」だから、東大を次の大きなジャンプへの跳躍台にしろと主張する。

単なる踏み台かよ!と東大の先生が怒りそうな意見だが、では他にどんな現状の停滞を打ち破る方策があるだろうか?私はこの小林氏の論に強く共感する。大変に激烈だし、ことは教育なので時間も要する(おそらく10年、20年の単位で)が、結局はこれしかないように思う。日本はそれなりの先進国であったことによる富の蓄積がまだしばらくはある(たぶん)ので、優れた人材を囲い込むことでその延命に貢献できるように思ってしまうし、だからこそ内向き思考になりやすいのだろうか。おかしなゆとり教育やエリート否定の平等主義に、首をかしげながらもまあいいかと従ってきた私たちの世代の責任も大きい。だからこそ日本を建て直すために貢献できるのであれば、必要な声はしっかり上げなければいけないと強く思う。

小林氏はさらに、高等教育に関して欧米と日本で極端に差がある寄付、特に大学への寄付にも言及している。学生一人当たりの基金資産額は、日本で最高水準の東大でさえ米国のハーバード大・プリンストン大より二桁も!少ない。豊かな資金があって始めてワールドクラスの頭脳を集められる、はずである。米国の大学の基金は国からの補助もあるが、その多くを卒業生を中心とする寄付によっている。日本にはそもそも寄付の文化がないといってしまうとそれで終わりだが、それにしてもこの差が国力の差につながっているとしたら議論は簡単ではない。やはり私たちの世代が考えるべきことは少なくない。

タグ:教育 英語 寄付
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