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「違う」ことをつきつめて「同じ」になる罠 [読後の感想]

「ビジネスで一番、大切なこと」ヤンミ・ムン著 ダイヤモンド社 を読んで

ハーバードビジネススクール(HBS)のヤンミ・ムン(Youngme Moon)教授と言えば、最も数多くダウンロードされた(広く読まれている)ケース・スタディ"Starbucks:Delibering Customer Service"の著者として知られているように、マーケティング分野の専門家。そしてハーバードのMBAコースで学生に最も人気のある講義をすることでも有名。

そのムン先生が始めて書いた本がこれ。原題は"Different"で、いわゆるマーケティングにおける差別化戦略を題材としている。では、マーケティングの教科書かというと、そうではない。ムン先生が冒頭に書いているように「本書はビジネス書を装ってはいるが、私たち自身についての本である」ということで、ここが本書の最大の特色であり魅力になっている。

著名な企業(IKEA、ダヴ、スウォッチ、ハーレー、ミニ...)の戦略を材料に、差別化の形をいろいろな切り口から示し、ざっと整理はするが、解答を示してはいない。サービスや商品を手にするユーザーにとって、差別化とはどんな意味を持つのか。それを考え続けているうちに、「違っている」ことが大事なのはビジネスだけではなく、人間としての生き方考え方そのものなのだというところに思考が広がっていくことに気づかされる。

ビジネスで差別化が最も重要な戦略要素であることは誰でもわかっているにもかかわらず、差別化を追及していくうちに類似性の罠にはまりこみ、結果として同質化競争の群れができてしまう。ホテルのケーブルテレビが無料になっているのに市外通話はすべて有料のままになっているように。

ムン先生はこうした状況に対して、次の二点を主張している。第一に「偏り」にこそ価値があること。それは、常に物事をいつも慣れ親しんでいることとは別の角度から眺めようとしなければ決して見つけられない。第二は「挑発」にも価値があること。対話に貢献する最善の方法は、私たちがあまり注意を払っていない、何かに対して注意を促すことである。

しかし、こうも述べている。「独創的なアイデアは生まれたての段階では極端にもろい。最初はくだらないアイデアと区別がつかないから、偉大なアイデアの多くが早死にしてしまう。」その例として、「20年前に私がお客に家具を組み立てさせる家具店のアイデアを見せられていたら、お客に調理させるレストランみたいねと笑い飛ばしたことだろう」とIKEAの例をあげている。大事なのは、柔軟に考えることだと言うだけならば誰にでも出来るのだ。

新しいビジネスプランを作るはめになった人、来期の計画をゼロから組み立てなければならない人などなど、資料を集め手を動かす前にまずこの本を読んではどうだろうか。メモをとらずにスッと読めるタイプの内容なので心配無用、まず肩の力を抜いて「はじめに」からお読みください。

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