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サウジからの石油が中国からの電気自動車に替わるだけ [新聞記事]

NewYorkTimes誌 Thomas L.Friedmanによる記事"Their Moon Shot and Ours;Sep.25,2010"を読んで

WEO2010が描く低炭素社会への道筋」セミナーのIEA(国際エネルギー機関)事務局長の田中伸男氏の講演の中で、あの(レクサスとオリーブの木、フラット化する世界、グリーン革命などの著者、ピュリッツァー賞は3回受賞)Thomas Friedman 氏が最近のニューヨークタイムズに書いたコラムの紹介があった。調べたら9月の記事らしい、見逃していた。あわてて読んだが、さすがに鋭いね。

フリードマン氏の論調はきわめて辛口だが、基本は愛国心。アメリカがどうすれば良くなるのか。米国内では批判も多いらしいが、ここまで徹底すれば立派としか言いようがない。2008年に出版された「グリーン革命」は、オバマが大統領選挙に出る前に読んで強く共感し、そのグリーンニューディール政策にも一定の影響を与えたとされている。

タイトルは、「彼らの月ロケット計画と我らの計画」とでも訳すのだろうか。月にロケットを打ち上げるような、長期間で、膨大な国家予算を費やし、しかもそれが社会の有様も変えてしまうようなインパクトを持つ国家的戦略に基づいた計画のことである。フリードマン氏は、中国の「月ロケット計画」は産業分野で広く厚く準備され、着々と実行に移されているが、米国を振り返るとアフガンに膨大な費用と人を投入し続けてはいるが、時代の大きな変化の中で依然として明確な方針が示され実行されているようには見えないと断じている。

そのフリードマン氏が電気自動車(EV)の取材で訪問したCoda社。米国のベンチャーで来年には価格37,000ドルで販売を開始する予定で、訪れたマンハッタンの近郊の工場では、まさに組み立てが始まろうとしている。一方で、天津にあるCoda社のバッテリー工場も訪れている。ここは、Coda社と中国のリチウムバッテリー会社そして中国国家海洋石油会社の合弁である。つまり中国では石油企業がその利益をバッテリーの開発に向けていることが明らかである。

そこでフリードマン氏はふりかえる。現代米国の経済のバックボーンは、かつて、国内で生産された自動車が国内産石油を使うというサイクルで維持されており、それが急速で大きな成長につながった。ところがこの数十年で、この産業は外国産のクルマに取って代わられ、しかも海外の石油をあたりまえに消費するようになった。いまや、クルマを一台購入するごとに15,000ドルが海外に流出し、しかもその代金はローンで支払う始末。クルマは米国にとって、豊かな中間層を大量に生み出すマシンだったはずなのに、いまや中間層を破壊するマシンに成り下がっている。

最新の電気自動車は、米国が洗練されたデザインを与え、電池や部品の多くは中国で作るかもしれないが、コントロールするソフトウェアはしっかり米国製で、これぞ米中両国のWin-Winの典型的なモデルだ。と喜んでいいような気もするが果たしてそうか、というの

がフリードマン氏の投げかけだ。

中東、例えばサウジアラビアなどへの石油依存を極力避けたいのは、エネルギー安全保障の観点から当然だが、ではそれに替わるもの

すなわち電気自動車の重要部品を中国に依存するのは、実は同じリスクを抱えることになるのではないか。電気自動車も中国にとっては「月ロケット」だが、米国にとっては単なる「趣味」にしかすぎないのではないか。国の攻防を本気で考えているのは中国で、米国はそこんとこどうなの?という強烈な指摘である。

パートナーシップの形成とかウィンウィンというのは確かに耳あたりのよい言葉で、安易に使ってしまうことが多い。本質は戦いだということを希薄化する麻薬にもなるということだろう。米国の復活を強く願うフリードマン氏の視点は、しかしよく考えるとわれらが日本にもあてはまる。我々の月ロケットはどこにあるのだろうか。

 

 
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