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温暖化が冬の雷神を怒らせる [講演を聞いて]

「日本海側における冬季雷の増加傾向について」 高田吉治氏(株式会社応用気象エンジニアリング社長)の第32回風力エネルギーシンポジウムでの発表より

風力エネルギーシンポジウム(11月24日)で、冬の雷について興味深い発表があった。発表した高田氏によれば、日本海側の冬雷がこのところ増加を続けているが、地球温暖化がその原因ではないかという研究である。

金沢の雷日数は、1930年代から50年代にかけて年間20日ほどで推移したが、60年代から増加を始め、2000年代に入ると毎年40日以上に倍加。しかもその増分のほとんどは冬季雷によるもの。中でも豪雪となった2005年12月には、その一ヶ月間で18日の雷日数を記録している。これでは、いつもゴロゴロと空が鳴っているような穏やかならぬ状況だ。

北陸の城下町金沢で少年時代を過ごした(8年間)者としては、この冬季雷の話しは気になる。北陸の暗い空の下で、昼も夜もなく遠く地響きのように長くとどろく雷鳴。記憶の深い底にひっそりと刻まれたままだ。でも東京の人間に冬の雷の話をしてもまったく通じない、雷というのは夏の季語なのだ、ここでは。

しかし、ちょっとまてよ。温暖化は暖冬につながり、暖冬なら少雪になる、とすると雷も少なくなるのではないか?現象が逆じゃないか?

こうした疑念に高田氏は次のような説明をしている。まず、冬季雷はなぜ生じるのか。寒気がどんどん大陸に溜まり、これが吐き出されるように日本を襲うだけでは雷にはならない。寒気が日本へ到達する際に、越えていく日本海が十分に暖かいときにだけ雲が発達し、雷雲を生じる。日本海の水温も気温に引きずられて冬には低下するのだが、大気の変化のほうがどうしても早くなる。この差が3ヶ月近くになる(水の比熱が大きいから)ため、大気は本番並みに寒いのに海がとんでもなく暖かい(相対的に)という現象が生じることになる。

高田氏によれば、冬季雷の引き金となる大気と海水温の差は10℃。これまでの観測ではこの差が15℃を越えているときに雷が頻発しているという。メカニズムとしては、海水と大気の温度差が拡大することによって海表面からの蒸発が一層促進され、大陸を出たときにはカラカラに乾いていた寒気が、日本海を越えている間にたっぷり湿気を含み連続的な雪雲を形成するものと考えられる。

ここまで説明されると、温暖化が日本海を徐々に暖め、その水温が上昇することによって寒気と海水表面の温度差が拡大し、雷雲を激しく成長させるから冬の雷の頻度が高くなる、ということがなんとなく理解できる。その一方で、高田氏によれば、冬季雷の発生は徐々に増加しているが、降雪量は増加しているとは言えないという。ここが不思議なところだが、温暖化が寒気の総量を抑制する方向に働いているということの現われかもしれない。このあたりは議論がいろいろありそうだが。

ちなみに、冬季雷の多発は日本海側に設置する風力発電の風車にとって天敵である。風車本体や羽への落雷によって破損や機能低下が生じるため、これを回避する方策の研究が進められており、風力エネルギーシンポジウムで冬季雷の研究発表が行われたのはその一環である。

「冬の稲妻」といえばアリスの名曲だ。しかし、谷村、堀内の二人とも大阪人だったはずで、冬季雷のイメージはどこから拾ったのか。城之崎温泉でズワイ蟹を食べたときに遠くで雷が鳴っていたのだろうか。そういえばズワイのうまい季節だ、いまは。


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