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汎用品ほど技術力が勝負 [新聞記事]

日経「私の履歴書」西岡喬氏:元三菱重工会長 11月24日から

西岡氏は、'99年三菱重工の社長就任後いきなり赤字に転落した。理由を追求したところ、市場が売り手市場から買い手市場になり、顧客の要求が厳しくなったことに尽きることがわかった。

「製品の機能が満足すればいいだろう」といった感覚が通用しない時代になった。顧客の求めに応えるための追加の仕事が増え、手間ひまが予想を上回り、新しい受注どころでなくなるといった悪循環に陥った。ほとんどすべての領域で同様の事態が生じ、赤字基調になった。難しい仕事ばかりで採算割れになるという声が大きくなった。

特別な仕様に基づく汎用でないもの、特注品の類は確かに採算に乗せるのは容易ではないが、これは契約時に内容をしっかりつめればクリアできる。最大の難関は、実は「汎用品」にあった。コストを削り始めるとどこかで品質の問題につきあたる。しかし、コストと信頼性を「両立できないのは、結局、十分な技術がないからだ」と西岡氏は厳しく断じる。

これに対処するために、同氏は主に原子力やタービンなどの技術を支えていた技術本部の人材を、汎用品分野の事業所に惜しげもなく送り込んだ。歯車一つとっても「理論の面を押さえた人材でないと、技術を高められない」と判断したのだ。

製造業、とりわけ先端的な製品は、技術の向上に時間がかかる。V字回復をめざして無理したとたん、問題が出ることが少なくないという。また、いっときの採算悪化で、技術もろとも事業を捨ててしまってはお話しにならないとも述べている。

「売り切り」の汎用品を「売ってやる」時代は、いつか終焉した。汎用品の細かいが現実的な要求に対して、確実に応えられる息の長い企業だけが市場の評価を獲得し、競争を勝ち抜き、さらに成長を続けることができる。

たしかに、航空機や衛星といった一般の民生品とは異なる、水準の高い信頼度が前提となる産業の事業観だが、これを特殊なものと受け取るべきではない。西岡氏の徹底した汎用品へのこだわりと執着に、今の日本の閉塞状態から抜け出すヒントがあるような気がしているのは私だけだろうか。

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