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みちびきの七姉妹がもたらすもの (1)他人のふんどし戦略 [新聞記事]

読売新聞2011年1月5日朝刊を読んで

一面「日本版GPS衛星7機体制へ」というタイトルで、昨年9月に打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」の同型機を2014年から2年程度の間に集中的に6~7機打ち上げる方針を政府が固めたと報じている。

この衛星は1機あたり製造・打ち上げに要する費用は350億円。これをあと6機追加するのには約2,000億円が必要。この資金は民間事業者が負担し、政府がこれを長期に賃借するという形を想定している。このためにPFI手法を用いることとしており、さらに従来と異なり衛星の製造費用もこれに組み込めるようPFI法も合わせて改正するという。

現在、測位情報を全世界的にサービスしているGPSは米国製。軍事と民生の両用をねらって開発・整備されたもので、昨年時点で31個の衛星が地球を回って情報を地上に送っている。米国はこのシステムの維持に現在でも毎年700億円の費用をあてており、このシステムのメリットを享受する各国に対して相応の負担を求めたいという話しは、これまでずっと続いている。

米国でも米国以外の国にとっても、すでにGPSは位置情報を扱うのに欠かせないインフラ環境である。日本の優れたカーナビもこれなしでは動かない。だが現状は「ただ乗り」。いつまでもそれでいいのか? 情報の安全保障と言う面で、既に社会のインフラになってしまっているものが、実は自国になんの権利もないものかもしれないという不安定な状況をいつまで放置しておくのか?

そこに、この「みちびき」と名づけられた準天頂衛星システム。日本独自の測位情報システムを持つべきという発想である。米国のGPSの展開戦略に対して、ロシアもEUも中国もそれぞれが自国の独自システムを追及し、既にそこそこの実績を重ねつつある。日本は気がつけばそれらの国々の後塵を拝している。そこで出てきたのがGPSを「補完」するというアイデア。後発で追いかける場合の常套として、ゼロからの開発を避け日本と言う地域に特化した絞込み(ガラパゴスと言ってはいけません)を図ったのだ。

確かに日本は、地形が険しく人が住みやすい平地は1割程度で人口も産業もそこに集中している。GPSを安定的に使うには常時上空に4個以上の衛星があることが不可欠だが、急峻な山岳と都市部の高層ビルがこの条件を難しくしている。もし、いつでも見通しの良い天頂付近に衛星を置くことができたら、測位情報サービスの有様が大きく変えられるはずというのがこのシステムの出発点。だが、このアイデアの長所であり最大の短所は、所詮他人のふんどしを借りていること。GPSをより使いやすくとは言うが、米国の傘の下で自分のため少しでもいい思いをしようという戦略であることに違いはない。ここが少し(かなり)悲しい。

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コメント 1

山田 ひろあき

これはいいですね・・素晴らしいです。

なんだか嬉しくなります スゴイ高性能ですね・・素晴らしいです。
by 山田 ひろあき (2011-01-08 19:02) 

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