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みちびきの七姉妹がもたらすもの (2)三姉妹のできること [新聞記事]

読売新聞2011年1月5日朝刊を読んで

「みちびき」準天頂衛星の構想は、最初は通信・放送と測位情報サービスの二本立て、しかも民間活用が重視されて登場したが、検討のプロセスの中でやがて測位だけの用途に絞り込まれ、とりあえず国費のみで初号機を打ち上げ、評価を重ねつつ次の段階に進むことになったいきさつがある。

準天頂衛星は、通常は赤道上にある静止衛星の軌道をほぼ45度傾け、日本上空を通過するようにすると赤道を中心とする8の字軌道を描くことになることを利用したもの。これを3機等間隔でその軌道上に配置することで、常に日本の天頂付近に衛星を運ぶことができる。三姉妹がつなぐ衛星の輪っ!ということだが、3個そろって初めてシステムになるので、1個だけでは実験機でしかない。残念ながら。

それでも、ほぼ天頂にGPSを補完する機能を持つ衛星があることで位置精度・信頼性の向上と測位時間の短縮を確実に実現できる。これによって従来は難しかった位置情報を鍵とする様々なサービスが生まれることが期待できる。

カーナビを考えればわかるように、現在のGPSは目的地までの経路案内はできているがリアルタイムではない。スマートフォンのGPSアプリを使えばわかるように、現在地の探索に不思議なほど時間を要する(1分では終わらない)のは、衛星スキャンやGPS基準信号局との通信などアプリの背後で複雑で多量のやりとりを必須としているためである。これらが補完衛星で代替されればモバイルユーザーの位置情報サービスは一変するであろう。

位置精度と測位時間の短縮によって、クルマの車線変更も把握できるし、走行支援という概念が初めて実用化の段階に入るのではないか。これからEVに転換していく新しい自動車の利用にとって、エネルギー最適の走行を追求しうる位置情報システムは不可欠なものになるに違いない。期待してよいと思う。

こうした位置情報サービスにとってのメリットに加えなければならないのは、国家としての情報安全保障の観点である。GPSという位置情報のインフラを他国に依存するのを避けるのであれば、GPS補完という他人のふんどし戦略から抜け出し、自立への道を探らなければならない。つまり、みちびきが7機必要だと言う根拠はここである。つまり三姉妹に加える残りの4機は自立願望を実現するために必要なのだ。

しかし、まず三姉妹が手を携えてその真価を発揮するのを確かめてからというのが踏むべき手順であろう。まず三姉妹システムの完成によって、日本以外のオーストラリア、インドネシア、マレイシア、ベトナム等々の東アジア圏がそのメリットを十分に享受したうえでなら、その共益のために次のステップ、すなわち七姉妹による独自の自立システムの構築が視野に入ってくるのではないだろうか。

一気に2,000億円というのは大きな花火としては立派だが、やや唐突な印象だ。また、こうした安全保障と表裏一体のシステムの構築をPFIでというのも疑問がある。これこそ国費をしっかり投入すべき事項ではないか。三姉妹ならあと700億円でよい。日本は確か、GPDが500兆円だったはずだが...

しかしそれでも、いつの日にか、アジアの空に日本の7つの姉妹衛星が上がり、アジアの路をあまねく指し示す時代が来ることを、心のどこかでは信じたい思いもある。

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