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県が電力買取に反対する理由は [新聞記事]

菅首相が最後に通したい3つの法案の一つと言われている「再生エネルギー特別措置法案」、自然エネルギー由来の電力を長期間固定した価格で電力会社が買い取ることを定めるものだが、これに対して岐阜県が反対表明をおこなった。法案は3月に閣議決定を経てはいるが、国会での審議はまだこれからでさまざまな議論があることはおかしいことではない。議論は大いにあるべきだ。しかし...

最初にこれを報じたのは、中日新聞6月24日
自然エネ電力買い取り制度 岐阜県が反対表明へ
“自然エネルギー電力の買い取り制度に対し、岐阜県は近く、導入反対の姿勢を表明する。太陽光発電の買い取りには将来、火力発電の3倍のコストがかかると試算し、「電気料金に上乗せされ、国民に押し付けられる」と批判する。多くの自治体は導入を支持しており、議論を呼びそうだ。”

次いで岐阜新聞。6月25日版。
タイトルは、「太陽光発電コスト、火力の3倍 県試算、国民負担増を懸念
“県は24日、国が掲げる2030年度に1000万世帯で太陽光+発電パネルが導入された場合、火力発電と比べて約3倍のコスト増になるとの試算を、資源エネルギー庁に報告した。 -中略ー 「再生エネルギー特別措置法案」では、買い取り費用を電力料金に転嫁できるため、県は国民負担増の恐れがあると指摘。コスト増が自然エネルギー導入の妨げになるとの懸念も明記した。”

そして毎日新聞の岐阜版6月25日
再生可能エネルギー:買い取り制度 コスト高、県が疑問視「幅広い議論必要」
“固定価格買い取り制度について、県は24日、「長期的にみればかえって自然エネルギー導入の妨げになる」と疑問を投げかけた。県の試算では、太陽光発電は将来、火力発電の3倍のコストがかかる上、現行案では再生可能エネルギーによって安定的に電力を確保することは難しいという。”

24日に県の省エネ・新エネ推進会議があり、その場で県の試算結果を報告したという毎日の説明が事実説明としては正しそうで、岐阜新聞の言うように資源エネルギー庁へ試算結果を意見を添えて報告するというのは、会議の翌日の記事としては少しちがっているように思う。その点で、中日新聞は会議の前日に県が近く反対姿勢を表明と踏み込んだ言い方をしており、印象としてもかなり前のめりで攻撃的だ。

試算結果については、後で述べることにして、そもそもこの意見表明はなんのために、しかもなぜこのタイミングで行われたのだろうか。地元紙を中心とする報道の流れに違和感を感じざるをえない。自然エネルギーに好感触を示す他の多くの自治体と異なり、孤立しても政府に叛旗を翻す姿勢に喝采をおくっているつもりなのだろうか。毎日が、江崎経済労働部長の発言をひいて、「政府案では、自然エネルギーの悪いところばかりが強調されてしまう。幅広い議論が必要」と穏やかに扱っているのが印象的で、このあたりが県の正直な感覚なのではないか。

県の試算は、菅首相の全国で1000万世帯に太陽光のパネルを設置し、これに固定価格買取制度を導入して支援すれば、化石燃料依存のエネルギー社会へ舵をきれるというアイデアを負担コストに着目して評価したということらしいのだが、ここでなぜ全国区の議論をするのだろうか。岐阜県に独自のエネルギー政策があって、菅内閣が通そうとする法案とは正面からぶつかる部分があるので、再考を促したいというであれば、マクロな数値の議論など持ち出さず、地域特性を踏まえたエネルギーの議論に引きずり込めばよいのではないだろうか。

新聞によれば、コストが3倍にもなり、国民に多くの負担を求める施策はおかしいという主張らしい(議事録を見ていないので詳細は不明)。これに対して細かいことはいろいろあるのだが、ここでは次の3点に限定して反論をしておきたい。
1.エネルギー安全保障
2.国富の国外流出
3.化石燃料価格変動

1.については、石油であれ、石炭であれ、天然ガスであれ、資源が乏しいわが国ではエネルギーの自給は常に大きな課題であり、太陽光でも、風力でも、地熱でも自然由来のエネルギーは間違いなく国産であろう。
2.については、化石燃料の輸入に現在23兆円を要しており、これはすべて国富の海外流出になっている。消費量が増加していないにもかかわらず資源価格の上昇で流出が漸増し、GDPの5%にまで近づいているので、なんとか増加にブレーキをかけるべきだ。
3.試算の前提として、化石燃料(LNGらしいが)の価格が20年間安定していると置いているらしいのだが、そんな楽観的な想定でなぜよいのだろう、こういうのを我田引水というのでは。

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