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太陽光発電促進付加金とは [エネルギー]

hokden_fukakin.jpgこの4月から、電力料金の請求書に「太陽光発電促進付加金」という項目が新たに加わった。電力会社の説明によると、各家庭の毎月の電力使用量に促進付加金単価を乗じたものが付加される。東京電力の場合には、0.03円/kWh、月の電力使用量が300kW程度の標準的な家庭の場合、この負担は10円くらいの金額になる。なあんだそれくらいか、というのが普通の感覚かもしれないが、この仕組み制度は電力会社のHPにはあるものの、しっかりと宣伝・説明されているようには思えない。

この制度は、2009年11月にスタートしたもので、住宅の屋根に設置された太陽光発電設備によって生み出された電力から、自家消費分を差し引いた余剰分の電力を電力会社が買い取り、その費用の総計を「太陽光発電付加金」として電気を利用するユーザーが使用電力量に応じて負担するもの。まだまだ太陽光発電の普及が進んでいないことと、発電したすべてではなく余剰分のみの買取のため、いまのところ負担感は少ないはずだ。

この付加金の単価は、地域ごとの太陽光発電量の総和と利用者数のバランスで決まるので、電力会社によって異なった値となる。最高は九州電力の0.07円、最低は北海道電力の0.01円と実に7倍の開きがある。太陽の豊かな南の地域ほど太陽光パネルの設置と利用が進んでいることが反映しているのだろう。

この制度は、太陽光に代表される再生可能エネルギーの普及を促進することを主眼としており、設置時の設備導入費用の補助に加えて、10年間の継続した奨励策(インセンティブ)を講じるもので、いま菅総理の重点法案の一つにあげられている、「再生可能エネルギー固定価格買取法案」の先駆けともいえるものだ。

これから審議される新しい法案の、先の制度との大きな違いは、太陽光を含む主要な再生可能エネルギーによって発電された電力を、余剰分だけではなく全量買取ることを電力会社に義務づけようとするところだ。ただし、この法案ではそうした大枠は定めるものの、具体的な買取り価格やその期間については明示していない。これらの諸条件は、政府が諸事情を勘案して毎年見直して設定するということになっており、どちらかというと枠組みを規定する法律といえるかもしれない。もっとも、その大きな枠組みが大事なのだが。

そうした理由で、法案の形だけから国民の負担を計るのは難しいのだが、政府(資源エネルギー庁)でこの制度を検討する過程で議論された価格等の条件などによると、太陽光パネルの価格と施工費等からなるコストをベースに再生可能エネルギーの導入が進んでいるドイツなどの事例を参考として、(議論の幅はかなり大きいが)価格は概ね40円/kWh、期間は20年程度を想定しているようだ。

この設定で制度がスタートし、10年程度経過した時点での再生可能エネルギーの導入量を我が国の総発電量の5%(現状は1%未満)にまで拡大できたとすると、世帯あたりの負担は200円(家庭用は余剰買取)から500円(すべて全量買取)程度と見込まれている。2020年代のできるだけ早い時点に自然エネルギーによる電力の比率を20%(水力を除けばほぼ10%と倍増)に引き上げたいとする菅首相の目標を達成するためには、単純に考えれば倍の負担が必要になる。標準家庭で月額400円から1,000円の負担増となると、月額電力量の6%から14%となり、これでは軽微な負担とは言えなくなる。ちなみに、ドイツでは、2009年の時点で一世帯あたりの負担額は3ユーロ(400円弱)であるが、電気料金自体は化石燃料の高騰に引きずられてさらに上昇しているため負担感は少ないとされている。

しかし、10%まで普及が進むのには、多くの時間と手間が必要だ。環境先進国のドイツでさえもその水準に達するにはほぼ10年を要している。これから先、電気エネルギーを取り囲む環境がどう変わるか、それを見込んで我が国のエネルギー政策はどうあるべきかということから考えれば、この負担の考え方も当然変わってくる。

まずコストの面では、再生可能エネルギー普及の方針が制度化されれば、市場が形成され拡大し、資本も流入する。その結果として競争が促進されてパネルやインバーターなどの部材も設置費用も緩やかに低減していくことが期待できる。一方で、石油石炭・LNGなどの化石燃料に依存する従来型の電力は、新興国需要の増大と資源枯渇によって価格が上昇することは避けられない。

日本では、原子力発電によってそうした価格上昇も吸収していたところもあったのだが、これからは原子力というカードに大きな期待はできなくなるとすれば、緩和策としての役割は他に求めなければならない。ドイツでは、こうした低減と上昇の二つの曲線が交わる、いわゆるグリッドパリティの時が、目前にある(あと5年くらい)という前提でエネルギーの主役交代など多くの施策が論じられている。わが国でも少しでも早期にそうした議論ができるようにしなければ、この10年の遅れは取り戻せない。



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