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地熱発電、15年間の断絶 [講演を聞いて]

geothermal.gif「地熱エネルギー開発の最新動向と地熱研究開発の必要性」弘前大学北日本新エネルギー研究所村岡洋文、東京大学エネルギー工学連携研究センター第14回CEEシンポジウムより

石油などの地下資源が決定的に不足しているわが国は、とくにエネルギーについては、他国からそのほとんどを輸入によって賄わなければならない。エネルギーの自給率という指標でみるならば、ほとんどゼロに等しい状況にある。そうした環境下では、原発の停止のように、エネルギー構成の一角、しかも太い柱、が崩れる事態が一度生じると、これを急に代替することができないか、できたとしても多くの国富を国外に流出させることになってしまう。これは急ぎの料金だから、しっかりはずんで貰えますよねと足元を見られるのは必定であろう。

ところが、大事なことを見落としてはいませんかというのが、この村岡氏の講演だ。まず、そもそもわが国は、地熱資源大国であること。しかも、そのポテンシャルは世界第3位。狭い日本は誰にも常識だが、世界の陸域のわずか0.25%に過ぎぬ国土の上に、世界の活火山の7.56%もの活火山を擁しているという。米国、インドネシアに次ぐ世界の第3位の活火山を持ち、地熱資源量もわが国を含む上位3カ国が4位以下を大きく引き離している。にもかかわらず、開発されている地熱発電容量は世界の第8位(2010年)に止まっている。しかもこの10年で開発の進んでいるニュージーランドとアイスランドに相次いで抜かれている。

他にエネルギー資源を持たないわが国が、有力なポテンシャルを抱えていることを知りながら、なぜ開発が進まなかったのだろう。特に、1997年以降は電力開発も研究も途絶えており、世界の潮流からまったくかけ離れてしまっている。この点について、講演後の質疑で「失われた15年」の理由について、村岡氏は「原因はいくつかあるが、一つは財政危機で国の予算に余裕がなくなったこと、もう一つは電力供給の面で原子力がその中核を占めることが固まったこと。結果として、地熱発電はそれまでの開発援助によって実績も上げているので、独り立ちできると判断された」と回答している。

エネルギー政策の転換としては、1997年に地熱が「新エネルギー」から除外されたことが最も大きく、それとともに国の地熱政策予算が激減し、合わせて国立公園内での開発が事実上できなくなったことなどで、投資家が地熱発電開発への投資を躊躇する状況になったことが大きいという。

地熱開発は、それを止めてしまった日本は別として、それ以外の国では最新の技術開発が積極的に続けられている。特に注目すべきは、「涵養地熱システム(EGS)」の実用化が目前となっていることであろう。これは、地球の表面から10km近く深く掘り下がっていけば、世界中どこでも必ず温度が緩やかではあるが上昇するという点に着目し、資源開発で大深度掘削利用技術が進んだことを背景としたもの。深部の透水性の低い層まで掘削し、そこに注水し、そこで加熱された水を地表まで汲み上げる方式である。水のない温泉開発とでも呼ぶのが近いかもしれない。数年前にGoogleがこの開発に大きな投資をしたことで注目を集めているが、最大の特色は火山国でなくとも地熱発電が可能なことで、火山とはほとんど無縁なドイツではすでに大型のプロジェクトが複数動いているという。

実は、この地熱発電によって生み出される電力については、この7月から実施される日本版FIT(固定価格買取制度)の対象に入れられており、さらには環境面などの規制の緩和もあり、これで風向きが大きく変わり、15年ぶりに事業化が動き出すのではないか。特に地熱の潜在賦存量は東日本、特に東北に偏っており、この地域での今後の大きな伸張が期待できそうだ。

それにしても、15年は長い。誰がその償いをできるというのだろう。

タグ:地熱発電 FIT
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