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現代の伊能忠敬とよばれて [新聞記事]

日経朝刊:2011年2月3日、文化欄「登山道を地図にする」守屋益男氏 を読んで

自らが熱心な登山家でもある守屋氏は、遭難の一番の原因でもある「道迷い」を避けるために、登山道を詳細に記入した案内図が必須と考え、氏の半世紀におよぶ登山経験と30年の登山ガイド本作りの経験を生かして、縮尺1万2500分の1の登山詳細図作りに取り組んでいる。

氏は40代のころから地元の山のガイド本の編集も手がけていたが、紙数の制約からすべての登山ルートを記載することができないことと、山は登るごとに新しいルートが次々とみつかるという発見の面白さといったものもうまく伝えられないことなどに不満を持っていた。しかし、こうした詳細な登山道の情報を確認や発見も含めて精緻に収集・整理することは一人では容易ではなく実行には至らなかった。そうしたなかで、長く続けた登山指導の弟子?たち30名の協力を得られることになり、地元岡山県南部にある熊山からこの挑戦が始まった。

この踏査は、集団で道をたどり、分岐するごとに人を分けてさらに先に進んでいく。距離はロードメジャーという測量機を転がして測り、標高差を加味して所要時間を割り出していく。まさに究極の人海戦術だが、難しいのは古い山道とけもの道の区別らしい。けもの道はたどっていくうちにやがて人が通れなくなるが、古い山道とは昔の里山で薪や山菜を探しにいくための道であり、かすかな痕跡を嗅ぎ取れるかどうかが腕の見せ所になるという。

地元岡山での挑戦は、2007年から年に一つのペースで進み、いよいよ昨年満を持して東京に進出した。ターゲットは世界一登山者が多いといわれる高尾山である。東京と岡山から総勢20人が集まり、約20日間かけて踏査を実施した。その成果はこの3月に吉備人出版(名の通り岡山県の出版社)から発行の予定だ。

詳細な踏査の結果として、これまでおそらく地元でもあまり知られていなかったルートも見出すことができたらしい。特に守屋氏があげているのは、送電線の保守点検のために電力会社が設けた「巡視路」で、その目的から見晴らしのいい場所を通ることから高尾山の周辺で探索したところ、全長が8240㍍の縦走路を発見することができたという。実は、守屋氏は電力会社のOBだったという種明かしがあるのだが。

氏とそのグループが踏査を行っている際に、若い登山者から「現代の伊能忠敬ですね」と声をかけられたそうだ。守屋氏は、知られざる道、消滅した道を復活させ、名前を与える作業には、創造にも似た喜びがあったと語っており、多くの仲間が参加する理由もそこにあるという。

現代の測量といえば、人工衛星やハイテク機器を駆使して行うものと相場が決まっているが、それでも人智がなければ切り開けない場面があるということだ。技術が電子機器とデジタル化に強く依存するなかで、全く違った価値を提供できるのはやはり経験を積んだ人間でしかないということだろう。あえて困難な課題に挑戦するというプロの真髄を見せつけられたような思いである。

氏とそのグループは、さらに奥多摩周辺を次の目標として準備をはじめているらしい。大いなる挑戦、止むことなし。敬意あるのみだ。
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登山詳細図世話人

はじめまして。


『高尾山 景信山 陣馬山登山詳細図』の世話人をしているものです。

本地図をご愛用頂いて誠にありがとうございます。

また、こちらのブログで、本地図についてコメントを頂いて、大変光栄です。


ご意見やご指摘などございましたら、是非お願い致します。


当方でもブログを始めましたので、よければこちらまで。

http://mordred1114.blog.fc2.com/

また当方ブログ内に、
こちらのリンクを貼らせて頂きました。


これからもこちらを訪問させて頂きます。

では、失礼致します。


by 登山詳細図世話人 (2011-08-29 14:23) 

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