SSブログ

猛暑が襲う街 [新聞記事]



この10年間がそれまでと比べてとにかく熱い夏だったということを否定する人は、おそらくいない。誰のせいかはともかく、世界中が暑くなってしまったのだ。そして日本の夏はというと、これもほとんど毎年のように猛暑に襲われている。埼玉の熊谷と岐阜県の多治見が2007年の8月16日に記録した40.9度というのが最高気温のようだが、多くの場合、最高気温の記録は内陸部で生じている。

そうした日本で最も暑い街の一つが、群馬県の館林市ということになっている。4年前に出た40.3度という気温もすごいが、昨年の夏に35度を超える日が41日もあったというのもすごい。日本は温帯に位置すると習ったのは間違いで、いつのまにか熱帯に宗旨替えしてたのではないかと疑ってしまう。しかし残念なことに、日本は冬の気温が低いので、どんなにがんばっても熱帯には入れてもらえないらしいのだが。

館林や熊谷、多治見などは、暑さにへばっているだけではなんの足しにもならないので、開き直って「日本一暑い街」を売りにしようとがんばっている。そんな背景のもと、震災による電力不足が表面化し、猛暑が健康を損ないかねない“災害”にまでなる危険も出てきたということで考えられたのが、猛暑対策のアイデア募集のようだ。そうした意味では、地域のおもしろい話でもなんでもなく、人命といった厳しい局面をも想定した切実な事情から出ていると捉えなければならない。

これから地域のさまざまなアイデアがたくさん出てくることを期待したいが、ここで対策の比重を置くべきは猛暑弱者となることが想定される人への配慮だと考える。高齢者とくに独居老人が地域のどこに生活拠点を持っており、猛暑時にはどのような行動をとるのか、これまで猛暑時に健康面での障害が生じた履歴はあるのか、等々押さえて起きたいことがらは多い。

しかし、そもそも関東平野の内陸の街が異常に暑くなった原因の一つは、巨大熱源としての東京の存在だという意見も多い。東京のマンハッタン化とともに、海っぺりに高さ数百メーターの“壁”が立ち並び、膨大な廃熱を垂れ流すとともに、海から吹いてくる南風を平然と遮断してしまう仕掛け作りがこの20年くらいで進行している。

地球全体が暑くなるのはとりあえずがまんするとしても、上積みの暑さを吐き出す東京の付けをなぜ内陸部が払わなければいけないのか。この議論は、質はかなり違うけれども、原発が東京から遠く離れた福島にあるという状況にとても似ているように思えてくる。だとしたら、解決のアイデアを捻り出さなければいけないのは東京人のほうではないだろうか。あるいは、出された知恵に対してお金で解決する役割を、他の誰でもない東京が果たすという選択もあるかもしれない。

いずれにせよ、猛暑がやってくるのはそんなに先のことではない。打つべき手を準備する時間は必ず必要なのだ。のんびりと、ようやく暖かくなってきたなどと季節の移り変わりを楽しんでいる余裕などないのだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

-

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。