SSブログ

ハードなエコはお好き? [映画を見て]

noimpactman.jpg「地球にやさしい生活」“No Impact Man”の放映が始まった。広く公開されているわけではないようだが、いろいろと議論が起こりそうな作品だ。それだけ今の時代の雰囲気に関係があるとも言えるのだが。

この作品、2009年に米国で公開され、それこそ賛否を巻き起こし大きな話題になったらしい。コリン・ビーヴァンとその奥さんのミシュル、それに一人娘の3人家族が、突如「地球にやさしい」生活に突入する実験ドキュメンタリー。NYTやABCで特集が組まれ、大騒ぎを引き起こしている様子が実験の経過とともに挿入される。ビーヴァン一家の試みは、現代文明への挑戦であり、挑発でもあるかもしれない。とにかく、カチンときた人が特にニューヨークを中心に多かったようで、主要メディアを中心に批判的な雰囲気に支配されていたという。

よくエコに配慮した生活という表現に出くわすが、コリンの選んだのはそんな甘っちょろいものではない。例えば...
「移動」
地下鉄・バス等の大量高速移動手段は使わない。自転車で移動が原則。歩ければ歩く。もちろんエレベーターもエスカレーターも使わない。
「購入」
いらないものはすべて捨てる。ブランドの鞄、靴、家具なども捨てる。どうしても物を手に入れなければならないときは中古に限る。新品はダメ。
「食事」
外食はダメ。食材は遠隔地産を避けて地元産に限る。ゆえにコーヒーはダメ。水は水道水があるので、決してミネラルウォーターなどを買わない。
「ゴミ」
ゴミは出さない。使い捨て容器、紙ごみも出さない(買わなければ出ないが)。生ゴミはコンポストにして土に還す。
「トイレ」
トイレットペーパーは使わず、古布で。
「電気」
使わない。もちろんTVは見ない。

このリストの最初のあたりなら、できそうな気がするが、下のほうになるとかなり「ええっ」という感じだろう。やり過ぎか、受け狙いすぎだろうと思いっきり突っ込みたくなる。

コリンは作家でブロガー(当時43歳)、ミシェルはNewsWeekのベテラン記者(39歳)。環境問題について現状の問題や政治批判を繰り返していても何もいつまでも変わらないと、あえて世間への問題提起として家族を巻き込んだ実験を始めることにした。だから、轟々たる批判は大歓迎。見世物となって飯の種にしようとしているという批判にも、決して否定せずに平然と向き合う。インタビュアーは「彼は危険なエコテロリストだ」とか「結果としてまじめな環境運動の足を引っ張っている」とかガンガンきついことをぶつけてくる。「ミシェルが雑誌記者で大量の印刷物を毎週ばらまいているのに何が環境だ」という意見には笑ってしまったが、まあでもそのとおりでなんでもありのアメリカらしいと言えばそのとおり。

普通に考えると、最初の意図はともかく、こんなにボロかすに叩かれまくるとかなりへこんでもおかしくないのだが、映像にはあまりそんなシーンは出てこない。コリンが打たれ強いのか、ミシェルの懐が深いのかとにかく1年間やり通している。動機がどうであれ、これを継続したのは、もうそれだけで賞賛に値するな。

電気を止めたのは実験開始から半年の時点だが、さすがにここまでやらなくともと同情してしまう。暑い夏にかかるために、部屋の冷房は良いとしても、食べ物が冷やせない。小さな子どもがいるので衛生も含めてちゃんとケアできるのかと疑ってしまう。アフリカではこうやってトマトを腐らせないようにしているんだといって素焼きの鉢を重ねた冷却機を試したりするんだが、当然のようにうまくいかない。大丈夫かよと声をかけたくなってしまう。

ここまで紹介すると、教条主義的な環境原理主義者を想像しそうだが、決してそんなことはない。コリンはもちろんまじめに取り組んでいるのだが、重くはない。むしろ挑戦を楽しんでいるような雰囲気すらある。一年間と期限を切っているせいもあるのだろうが、決して深刻にはなっていない。やっぱり奥さんのミシェルが偉いかなぁ。そのあたりを配慮したようなシーンがところどころあって見所になっていると思う。

作品の最後に一年が過ぎて電気のブレーカーを再び入れるシーンがある。ストーリーの区切りとしても象徴的なところ。夫婦の友達が集まって実験生活完了記念パーティが始まるのだが、決して大騒ぎではなくほのぼのと喜ぶという感じがまたよい。そんなに無理をしてるわけじゃないんだと語りかけるようだ。

ちなみに、実験の終了後も地球にやさしいアクションの多くは続けているそうだ。それでもさすがに、電気と冷蔵庫と洗濯機とトイレットペーパーだけは使うようになったらしいのだが。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

故郷に報いる平成の203高地 ブログトップ
-

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。