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大連動で巨大化する津波 [雑誌記事]

「この人に聞く:第84回」土木学会誌 vol.96 no.11 Nov.2011 を読んで。
今回のインタビューは、東京大学地震研究所教授の古村孝志さん。地震と津波データ解析から明らかになった巨大津波の発生メカニズムについて語っている。

古村氏は、10月15日に静岡市で開かれた日本地震学会の一般公開セミナー「東日本大震災に学び東海地震に備える」で、今回の津波発生が従来の地震断層モデルだけでは十分に説明できないケースであったとして、これを新たに「大連動」現象として理解し、東海地方でもこれに備えるべきだと述べており、学会誌のインタビューとほぼ同じ内容であったようだ。(新聞記事はここ

これまで、海溝型の巨大地震は潜り込む海のプレートに引きずられた陸のプレートが限界に達して大きく跳ね返ることで生じ、これより浅い海溝付近では固着が緩いため大きな地震は起きないとされていたが、それが今回の地震ではそこが大きく動き、巨大津波の発生につながったという。海溝付近で起きる地震については、これまでも発生が知られていたものの、陸上部に大きな揺れをもたらさず津波だけを起こす「津波地震」として理解されていた。1896年に起きた明治三陸津波はこの代表と考えられているが、海溝型の巨大地震と津波地震がさらに連動することがある、すなわち「大連動」までは考えられていなかった。

今回の現象を丁寧に解析したところ、それは生じるはずのない「大連動」だった。海溝付近は大地震が生じない“はず”なので、これまで研究者の中でも関心が払われておらず、観測も研究も十分ではなかったという。しかし、だからこんなことはもう起きないと決め付けてはいけないらしい。古山氏によると、四国から東海地方は過去に海溝型巨大地震の連動または三連動が起きたことがあり、今後はさらに津波地震との大連動を考慮する必要があるという。その場合には、三連動の場合の津波の高さの1.5~2倍にもなりうるため、瀬戸内や湾内へと容易に津波が進入し、さらに川を遡って内陸に浸水する可能性もあるという。

1605年の慶長地震は陸域の被害が少なかったことから津波地震とされており、相模湾沿岸で10mを越える津波が記録されているが、東海地震あるいは南海地震として想定されている海溝型巨大地震がこれを誘発し複合することを想定すべきだという。発生順序も巨大地震から津波地震と決まっているわけではなく、その逆もあるし連動発生の時間差も想定幅を狭くするべきでないという。

さらに明応地震(1498年)では鎌倉の大仏殿が津波で破壊されたという記録が残っているが、事実だとすれば津波は海岸線から最低でも1kmは内陸を駆け上ったことになる。これが大連動地震であったかどうかは今後の研究を待つことになるのだろうが、津波高はこれまでの想定の少なくとも「倍」を覚悟しなければいけないということになると、大阪湾や東京湾の最奥までかなりの津波被害に備えなければいけないということになるだろう。

とにかく確かなことは、巨大地震の発生機構は未だにわかっていないことが多いということだ。確かに、1970年代の後半に、人口の集中している太平洋ベルト地帯に大地震が切迫しておりこれに国として備えるべきという趣旨で大規模地震対策特措法が定められ、研究と観測が強化され、プレート衝突によって生じる断層モデルで地震発生を説明できるのでこれを前提として対策を講じるという流れができていたのだが。その前提が今回の地震と津波で脆くも崩れ去った。

いつから地震は予知できるようになったというのだろうか。そういうことにしておかないとまずいような雰囲気がいつから形成されていたのだろうか。実は完成もしていないものを既に十分に実用のレベルだと強弁していたことを、目をつぶっていたのは誰だったのだろうか。このことを曖昧なままで今後の地震研究を進めてもよいとは到底思えないのだが。

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