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津波の心配はありません [気がついた]

この地震による津波の心配はありません

地震がどこかで起きたらしい、というのはTVの画面の上端に地震速報が表示されるからわかるのだが、いつからこんな仕組みが動いているのだろう。しかも緊急地震速報が出る時には、表示が出てしばらくして揺れに襲われることもある。あたかも地震の発生を先取りするような通知システムが動いている。これだけできれば地震予知なんてすぐじゃないのと思ってしまいそうなのだが。

この仕組みは2007年10月からTVなどを通じて一般に提供されるようになった。1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災を引き起こした)を一つの契機として、高精度でリアルタイムの観測情報を取得できる地震計の設置が進んだことで、先行して伝わる地震P波情報を解析することで震源や揺れの大きさなどを推定し、遅れて到達する地震S波による大きな揺れを少しでもかわす、机の下に潜り込むとか高速移動車のブレーキをかけるなど、ことを可能にした。3.11の際にも、東北新幹線を止めたのは、まさにこのシステムだ。地震の多い国でこうした非常事態回避システムを実運用しているのは日本だけだろう、というか発生頻度の少ないところでは投資効果が低くて宝の持ち腐れになるだけだが。

これはこれですごいのだが、TVの地震情報で「この地震による津波の心配はありません」というメッセージが加えられることが多い。安心させてくれるのはいいんだが、なんでそんなことが断定できるのかがわからない。思わず、あんたは全能の神かと言いたくもなる。実は、これは先に示した高精度地震計ネットワークが、複数の地点のP波情報を基にして震源の断層モデルを推定し、その場所・深さによって津波が生じるかどうかを計算している。もう少し正しく言うと、そのつど計算していては現在のコンピュータの能力ではさすがに間に合わないので、日本周辺で津波を起こしうる震源モデルを10万ケース近く事前に計算しその結果をデータベース化し、断層モデルから起きる津波の可能性をそこから瞬時に検索できるようにしてあるのだ。なるほど、この仕組みすごい。よく考えしかも実現したものだと思う。

しかし、しかしだ。こんなマジックのようなプロセスを知らない我々は、“心配はありません”と冷静に言われてもぜんぜん釈然としない。もう少し丁寧に、こういう理由で大丈夫だよと教えてはくれないものだろうか。あんたは、神のような能力があるから、断定できるのかもしれないが、こちとらはそれじゃなんにもわからないんだ。釈然としないならまだよいのだが、これを百回繰り返されると、津波の話しはいつもの単なる前振りの類かと頭が勝手に反応してスキップするようになってしまう。思考停止がそこで始まる。これはまずいよ、きっと。

ものすごい、というか到底思いもつかないような実時間システムを作るのは、たしかに日本人は得意なんだというのが、このことでもよくわかった。しかし、それを運用するときの配慮が足りないように感じる。配慮が足りないというより、これだけスゴイシステムなんだから使えない、あるいは上手に使わない方が悪いというような上から目線を感じてしまうのは、単なるひがみだろうか。津波がどんなときに起きるのか、あるいは起きないのかその理由を知ってもらう必要はないという決め付けがあるのではないか。揺れたら直ぐに高台に逃げろ、という教育啓蒙も大事だと思うが、津波知識を少しづつでも得ることも必要だ。とても大事なことなんだから、もう少し考えてはもらえないものだろうか。

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