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大学を出たけれど [雑誌記事]

大学別「就職力」ランキング 週刊朝日2011.12.30号より

全国有名18大学を出た学生はどんな会社に入りたいのか、そして実際にはどこに入っているのかを今春卒業した学生を対象に調査した結果が大学ごとに上位から30位まで一覧として示されている。実績については、大学へのアンケートをもとに大学通信が集計している。この記事のまとめとしては、リーマンショック後の厳しい就職環境下で、学生が極端に安定志向に走っていること、とくにメガバンクへの偏りが際立つという点をあげている。反対に、自動車や電機メーカーは人気が低迷しているという。とにかく不景気で学生は競争をきらい、とにもかくにも安定志向だそうだ。

ここまでは、調査結果を見せられなくとも、たぶんそうだろうなという印象だが、さらに結果表をじっくりと読み込むと、いろいろなことが見えてくる。ここでは二つに絞って取り上げたい。

1.金融と非金融
銀行・証券・保険等の金融関係に着目すると、私大は金融、国立大は非金融にはっきりと分かれる。特に関西でこの傾向が強く、関学、関大、同大はいずれも20社以上、上位30社に限れば卒業生の3分の2が金融関連に進んでいる。関東でもそこまでではないものの、明大、中大、立大などでは過半を越えている。早慶でもやはり金融優位で、早大14社、慶大11社としっかり中軸を押さえているといってよい。金融関連の企業が優秀な学生を大量に必要としているのか、学生の志向が金融を向いているのか、大学によって理工系の学部学科数の違いもある(一般に私大には理工系が少ない)ので注意は必要だが、それにしてもこれは偏りすぎてはいないだろうか。

これに対して国立大では、東大7社、京大5社、九大5社、阪大3社、名大3社、東北大1社とこれまた極端に少ない。行きたくないのか、行けないのかよくわからない。金融は私大にまかせて、物づくりとその販売は国立大ががんばるからということなのだろうか。あるいは、都会の学生がメーカーを嫌うのでそこを地方大が埋めているということなのだろうか。ここまで傾向が極端では、大学生の安定志向というような単純な構図では論じることはできない。

この上位ランクだけで日本の産業が形成されているとすると、日本は製造と販売を手離して金融特化に暴走し、明日にでも総こけになりかねない。ここで注意しないといけないのは、結果が上位の30社に限られていることであろう。実際の新卒採用は、ロングテールで裾野が広く、突出した企業に目を奪われていると全体像を見失うのかもしれない。採用数は多くはない会社が大多数を占めているので、全体としてはバランスはとれているということではないか。サービス産業の比率が徐々に高まっているとはいっても、依然として製造と販売による売上げが主を占め、日本のGDPを担っているはずだ。

このあたりの推測は、データを見ているわけではないのであまり論理的ではない。むしろそうであってほしいというのが正直なところなのだが。

2.電力会社
18大学の内、10校で電力会社がランクインしている。中でも東京電力が目立つ。慶大30人、早大27人、東大20人、東北大14人、北大12人、明大11人、名大6人。次いで関西電力で、京大28人、阪大26人。以下ほぼ地域ごとに北海道電力に北大31人、東北電力に東北大29人、中部電力に名大21人、京大12人、九州電力に九大38人。国立主要大学と早慶でがっちりという構図。中でも特筆すべきは、どの電力会社も順位が上位にあること、すなわち北大、東北大ではそれぞれ北海道電力と東北電力が堂々の1位、京大と九大ではそれぞれ関西電力と九州電力が2位、名大で中部電力が5位、阪大で関西電力が7位とここまですべてベストテン。東大は東京電力が14位だが、これは他大学からもしっかり採用しているので票が割れたということだろう。

ここまで並ぶと壮観としかいいようがない。地域を代表する企業である電力会社に、地域を代表する大学が特に優秀な人材を供給するという形が安定的にしかも長期間続いてきたのだ。地方に行くと「嫁にやるなら電力さん」というのはよく聞く話しだが、まさにそのとおりになっている。電力会社が大学ごとに枠を決めて、毎年コンスタントに採用を継続しているのだろう。学生にしてみれば、地元の県庁や市役所に入るのと同じ感覚で、しかも最も高いステイタスを獲得できる民間企業という位置づけで地域の電力会社を就職先に選んでいるのだと思われる。

これが日本の実体だからと言われるとぐうの音も出ないが、さて来春の採用はどうなっているのだろう。昨日までと同じように日本の社会は変化せず、したがって就職先を選ぶときに最初に思いつくのは電力会社ということに、残念ながら現在もなっているのだろうか。あるいは、来春の採用は1年ほど前に終わっていたので、今年と大きくは変わらない、変化が出るのは再来年になるということかもしれない。さてどうなんだろう、就職活動中の学生に聞いてみたいものだが。

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