世界はエネルギー自立へ向かう [映画を見て]
「第4の革命 - エネルギー・デモクラシー」を観る機会があったので紹介したい。
革命というタイトルで、しかもエネルギーを扱っているとなると、政治色むきだしのアジテーション映画だと思いがちだが、みごとに肩透かし、そういう類のものではなかった。
この映画は2010年にドイツで最も観られたドキュメンタリー作品である。3.11による原発事故の直後にテレビ放映された際には、欧州圏で200万人が視聴したといわれており、ドイツの脱原発決定にも影響を与えたともされている。映画が作られた目的は、再生可能エネルギーについての知識を広めること、その可能性を人々にわかりやすく伝えることで、これから30年以内に100%再生エネルギーへのシフトが実現できるということを、世界の様々な場所の様々な試みを通して示している。
監督のカール・A・フェヒナー氏は、2005年にドイツの再生可能エネルギー普及を先頭に立って牽引していたヘルマン・シェア氏の著作(Energieauautonomie)に出会い、100%再生エネルギーに転換できるという主張に強い衝撃を受け、その考え方が科学的にも社会的にも十分に納得できるものかどうかの調査を慎重に行った。その結果、こうした主張がきわめて正当なものであり、この主張を国民運動として展開できるような、広く市民の感情に訴えるドキュメンタリー映画を制作することを決意し、4年をかけて完成に至ったという。製作に必要な資金は、ドイツ国内で150万ユーロの寄付が150を越える企業・個人から集められた。
したがって、このドキュメンタリーではシェア氏が原作者でかつ主演(あるいは案内者)という重要な役割を果たしている。冒頭は、カリフォルニアのロスが舞台で、この米国の巨大な街でもそのエネルギーのすべてを再生可能エネルギーに置き換えることは可能だというシェア氏のモノローグから始まる。
再生可能エネルギーに取り組んでいる事例は、デンマーク、ドイツ、マリ、中国、バングラデシュ、アメリカ、オーストリア、ニュージーランド、ブラジルなどでの取材を中心にまとめられているが、概ねインタビュー中心で、刺激的あるいは煽るような映像は少なく、全体として落ち着いた淡々とした内容になっている。それでもエピソードごとに挟まれるシェア氏のコメントはきわめて鋭く重い。
シェア氏は、ドイツ連邦議会議員(社会民主党)としてFIT(固定価格買取制度)を開花させた自然エネルギー促進法(EEG)を2000年に成立させた中心メンバーで、太陽経済や自然エネルギー100%社会を早くから提唱していた。ソーラーの父とも呼ばれるなど、この分野での先頭に立ち世界各国の運動の組織化も進めてきたが、突然2010年の10月にこの映画の完成を待たずに亡くなっている。
氏は、インタビューの中で自然エネルギーへの取り組みがドイツを中心に成果を上げ始めてはいるものの、抵抗勢力がいかに手強くしたたかであるかを繰り返し強調している。氏のメッセージは常に志に輝き、強烈で熱く聞くものを揺さぶるのだが、どこか疲れたような、あるいはいらだつような印象もあり、氏の活動がいかに厳しい環境下で進められているかを感じさせる。
この映画のもう一方の主役は、国際エネルギー機関(IEA)のチーフエコノミストのファティ・ビロル氏である。世界のエネルギー供給は、新興国の需要増大を背景に低炭素化の要請をも受けて化石燃料と原発への依存をさらに増すようにならざるをえないという、典型的な現実路線の代弁者。当然に既得権益者からの視点で語っているので、その論理に嘘はないとしても、映画の流れからみるとまさに敵役、しかもかなり手強そうでダースベイダー的役割をしっかり果たしている。この対比が映画の強いアクセントになっており、ビロル氏という得がたい適役を得たことも作品の成功につながっているように思う。
監督のフェヒナー氏は、映画のタイトルに「革命」という強い言葉をあえて選んだのは、個人一人ひとりの強い達成感を引き出したいという願いからであると語っている。ドイツは国民性として、国(お上)の決定には従うという保守的な傾向が強い国だという。東西両ドイツの統合から、新しい社会を作ろうという運動が徐々に生じ、個人が自分の頭で考え手足を動かし、自尊心と自律性を高めることによって自我を少しずつ高めることでしか突破できないものがあるという考えから、この作品を構想し完成させたという。さらに作品にこめた強い思いを世界に広げたいという。
この作品は、現在東京など限られた地域で公開されているが、自主的な上映会も数多く企画されているようで、これから日本の各地でもこの映画をみることができるかもしれない。この映画で提示しているようなことが、これまで日本では広く共有されてこなかったように思う。もし機会があれば、ぜひ観ることをおすすめしたい。
革命というタイトルで、しかもエネルギーを扱っているとなると、政治色むきだしのアジテーション映画だと思いがちだが、みごとに肩透かし、そういう類のものではなかった。
この映画は2010年にドイツで最も観られたドキュメンタリー作品である。3.11による原発事故の直後にテレビ放映された際には、欧州圏で200万人が視聴したといわれており、ドイツの脱原発決定にも影響を与えたともされている。映画が作られた目的は、再生可能エネルギーについての知識を広めること、その可能性を人々にわかりやすく伝えることで、これから30年以内に100%再生エネルギーへのシフトが実現できるということを、世界の様々な場所の様々な試みを通して示している。
監督のカール・A・フェヒナー氏は、2005年にドイツの再生可能エネルギー普及を先頭に立って牽引していたヘルマン・シェア氏の著作(Energieauautonomie)に出会い、100%再生エネルギーに転換できるという主張に強い衝撃を受け、その考え方が科学的にも社会的にも十分に納得できるものかどうかの調査を慎重に行った。その結果、こうした主張がきわめて正当なものであり、この主張を国民運動として展開できるような、広く市民の感情に訴えるドキュメンタリー映画を制作することを決意し、4年をかけて完成に至ったという。製作に必要な資金は、ドイツ国内で150万ユーロの寄付が150を越える企業・個人から集められた。
したがって、このドキュメンタリーではシェア氏が原作者でかつ主演(あるいは案内者)という重要な役割を果たしている。冒頭は、カリフォルニアのロスが舞台で、この米国の巨大な街でもそのエネルギーのすべてを再生可能エネルギーに置き換えることは可能だというシェア氏のモノローグから始まる。
再生可能エネルギーに取り組んでいる事例は、デンマーク、ドイツ、マリ、中国、バングラデシュ、アメリカ、オーストリア、ニュージーランド、ブラジルなどでの取材を中心にまとめられているが、概ねインタビュー中心で、刺激的あるいは煽るような映像は少なく、全体として落ち着いた淡々とした内容になっている。それでもエピソードごとに挟まれるシェア氏のコメントはきわめて鋭く重い。
シェア氏は、ドイツ連邦議会議員(社会民主党)としてFIT(固定価格買取制度)を開花させた自然エネルギー促進法(EEG)を2000年に成立させた中心メンバーで、太陽経済や自然エネルギー100%社会を早くから提唱していた。ソーラーの父とも呼ばれるなど、この分野での先頭に立ち世界各国の運動の組織化も進めてきたが、突然2010年の10月にこの映画の完成を待たずに亡くなっている。
氏は、インタビューの中で自然エネルギーへの取り組みがドイツを中心に成果を上げ始めてはいるものの、抵抗勢力がいかに手強くしたたかであるかを繰り返し強調している。氏のメッセージは常に志に輝き、強烈で熱く聞くものを揺さぶるのだが、どこか疲れたような、あるいはいらだつような印象もあり、氏の活動がいかに厳しい環境下で進められているかを感じさせる。
この映画のもう一方の主役は、国際エネルギー機関(IEA)のチーフエコノミストのファティ・ビロル氏である。世界のエネルギー供給は、新興国の需要増大を背景に低炭素化の要請をも受けて化石燃料と原発への依存をさらに増すようにならざるをえないという、典型的な現実路線の代弁者。当然に既得権益者からの視点で語っているので、その論理に嘘はないとしても、映画の流れからみるとまさに敵役、しかもかなり手強そうでダースベイダー的役割をしっかり果たしている。この対比が映画の強いアクセントになっており、ビロル氏という得がたい適役を得たことも作品の成功につながっているように思う。
監督のフェヒナー氏は、映画のタイトルに「革命」という強い言葉をあえて選んだのは、個人一人ひとりの強い達成感を引き出したいという願いからであると語っている。ドイツは国民性として、国(お上)の決定には従うという保守的な傾向が強い国だという。東西両ドイツの統合から、新しい社会を作ろうという運動が徐々に生じ、個人が自分の頭で考え手足を動かし、自尊心と自律性を高めることによって自我を少しずつ高めることでしか突破できないものがあるという考えから、この作品を構想し完成させたという。さらに作品にこめた強い思いを世界に広げたいという。
この作品は、現在東京など限られた地域で公開されているが、自主的な上映会も数多く企画されているようで、これから日本の各地でもこの映画をみることができるかもしれない。この映画で提示しているようなことが、これまで日本では広く共有されてこなかったように思う。もし機会があれば、ぜひ観ることをおすすめしたい。
2012-01-20 22:30
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