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千葉から逃げ出したのか [新聞記事]


総務省が毎年公表している人口移動調査の結果が新聞などで取り上げられている。切り口のほとんどは、震災の影響が2年目に入ってどう変わったかにある。震災と原発の影響で当初は多くの転出が生じたものが、時間の経過とともに回復に転じているというものだ。地域によって差異はあるものの、そうした想定に近い数字がでているようにみえる。

ここで指摘したいのは、産経新聞1月28日の記事の中の東北ではなく「千葉県」の変化についての説明だ。
千葉県も2年連続で転出超過となったが、超過人数は前年(3935人)から4253人増えた。大震災の液状化現象で住居被害を受けた住民らが県外に出るケースが多いとみられる。
2年連続で転出超過となったというのは驚きだが、その理由が「液状化」で県外に出たというのは、どういう調査結果に基づいているのか示されてはいないが、にわかには信じがたい。確かに、浦安市の海岸部の一部で住居が著しい被害を被ったというのは衆知の事実だが、それが2年連続の減少、しかも県全体の数字として表れるとは考えにくいように思う。

実は、ほぼ1年前にも人口移動調査結果が公表され、同じように千葉県が転出超過に突然転落したと報じられていた。直後の報道では、原因は浦安市などの被災が引き金かとされていたが、千葉県ではこの事態を重く捉え、原因を究明することとなったらしい。その結果が昨年の8月に、「人口動態分析検討報告書:千葉県事項動態分析検討会議」として公表されている。震災の影響で千葉という地域のブランドに傷がついてはたまらないということであろう。調査は、転出が転入を越えた市町村の分布と、ここ数年の推移に注目したもので、結論は、「ネットでマイナスになったのは、転出が急増したからではなく、転入が減少したから」ということである。さらにわかり易く言うと、しばらく続いていた千葉への人口流入にややブレーキがかかったのであって、決して震災で逃げ出したのではないということになろう。

確かに、この説明を聞いてから総務省の新しい報告を少し詳しく見てみると、納得できるところが多い。例えば、過去3年の転出超過数上位20市町村というランクによると、平成22年では市川市が全国1位、23年では市川市(6位)、浦安市(8位)、松戸市(12位)、24年では市川市(1位)、松戸市(3位)、浦安市(6位)、我孫子市(11位)となっている。確かに震災でランク入りの市町村が増加はしたが、市川市はその前から首位だった。つまり、地震の前から転出超過は始まっていたのだ。さらにランク入りしている市町村は例外なく、東京との隣接域に位置する。東京の人口増が江戸川を越えて、東ににじみ出た地域である。若い世代向けの都市開発が急速に進んでいたものが、何かをきっかけに減速していたということなのだ。その何かには、都心での超高層マンションの大規模開発なども含まれるだろう。東に離れずとも住まいを確保できるという状況の変化が、新規の転入を鈍らせたのかもしれない。そして、それに震災が後押しをした、結果として転出超過を加速させたという理解が正しいように思える。

千葉県が傷ついたブランドを守るために主張している「逃げ出してはいない」というのは、なんとか認めるとしても、ネットで減少傾向にあるという事実は否定することはできない。東京という巨大な化け物の吸引力が、隣接する自治体に過剰に作用したのだ。それを正直に認めたうえで行政として何ができるか、今の時代での魅力ある街づくりとはなにかという問いに正面から応えていくべきであろう。

それにしても産経の記事はいただけない。少し調べておけば、「液状化で県外に出た」という表現にはならないはずだが、これでは完璧な憶測による風評記事ではないか。千葉県からクレームが来たらどうするつもりなのだろう。



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